そうや、何もかもアイツのせいや。
こんなことやったら、もっと早めに手打っといたら良かった…。

ってもう遅いか。

目の前に立ち塞がる朋香を見て溜息をつく。


そう、あれは2週間前の出来事ー



2週間前の某日。
忍足侑士は部活を終えて、部室で帰る準備をしていた。


「さてと、ほな先に帰るわー」

「忍足先輩、お疲れ様です!」

「珍しく今日は早いじゃねーの。デートか?アーン?」

そうや。
跡部のこの余計な一言が部室全体に広がってー

「デェト!?ハハッ侑士に限ってそんな」

「向日先輩、知らないんですか?確か2ヶ月ほど前に彼女できたって」

「そうそう、確か青学の子だっけな?」

「差し詰め青学との練習試合で仲良くなったんだろうが、
 お前ダブルスのパートナーだろ?」

「っ知らねぇの俺だけかよ!おい侑士、どういうことだ?」

「どういうことってなぁ、俺は別にみんなに話して回ったんとちゃうで。
 ただ俺が最近1人で先に帰ったり、携帯をマメにチェックしてんの見て
 あいつらが聞いてきたから答えただけの話や。
 で、お前は何も聞いてこーへんからわざわざ報告するまでもないし…」

「っちくしょうっ!」

「何がちくしょうやねん。彼女欲しかったら自分も作りぃな。
 さ、そろそろ行かなあかんし、続きはまた今度な!」

「っくそくそ侑士!遅刻して彼女に振られたらいいんだよっ!」

「ハァ…なんやそれ…。お前の怒る意味がわからんわ」

「うるせー!いつか彼女見たら言ってやるよ!
 あんな気持ち悪いミニスカ足フェチ伊達めがね男となんか、
 さっさと別れちまいな!ってな」


自分だけが知らなかったことがよっぽど悔しかったんやろな。
あれやこれや言うて当たり散らす岳人の怒りに付き合いきれず
話を途中で切り上げて帰ったんやった。

今思えばこの時に、あいつをもう少しなだめていたら
…なんて、まさに後の祭りやな。

2週間前の俺はまさかこの2週間後に
起こる事態を想像すらしてへんかった…。





2週間後の某日。
彼女である小坂田朋香と俺は学校帰りにカラオケに来ていた。

とは言っても、歌うのは途中で中断し、
この間の練習試合のことや学校の話、些細な会話をして
ごく普通のデートを楽しんでいた。

ーが、どうも朋香の様子がおかしい。

いつもなら冗談に付き合ってくれたり、
些細な話でもなんでも興味津々に聞いてくれたりする朋香が
さっきから複雑な表情で黙り込んでいる。


「ーでな、そいつ何て言うたと思う?」

「…」

「……どうしたん朋香?なんか急に黙りこんで」

「っえ!?う、ううん…何でもないってー」

そう否定する朋香だったが、明らかにいつもとは様子が違う。
こんなに沈黙が続くこともないので、さすがに忍足も気になってきた。

どうもこの間、氷帝での練習試合を見た帰りあたりから様子が変なのだ。
何か言いたそうだが、自分からは言いにくいといった感じか。
さすがに忍足も気になり、思い切って朋香に聞いてみた。


「ほら、思ってること言うてみ?何か俺に言いたいことあるんやろ?」

「な、何で…?」

「もう付き合って2ヶ月、ある程度のことは顔見たらよぅわかる」

「…そう。じゃあ正直に言うけど」


そう前置きをした朋香に一瞬忍足は戸惑う。
タイミング的にも別れ話なのでは…なんて最悪の事態も想像できた。

自分から話を振ったものの、かなり不安になってしまった忍足だったが、
次の瞬間、思いもよらない出来事に、ただただ呆然としてしまう。

前置きで決意した朋香が、気合いを入れて立ち上がると
突然、制服のスカートを太ももまで捲り上げると
忍足の前に足を突き出したのだ。


「ちょっ…!えっ…どうしたん!?」

「足…なんですか!?」

「な、何のことや!?」

「この間、向日さんに聞いたんです。“侑士は足が好きだから”って」

「…あんのアホ~~!!」

「ってことはやっぱり足が目的なのね!?」


別れ話かと焦った自分を心底後悔した。
足を見せて、上から見下ろす朋香に
呆れと安心が混ざったような表情で話す。


「…アホな岳人のことなんか信じたらあかんで。
 第一に朋香の足は俺好みとちゃうし。
 俺はもっとミニスカからスラーッと伸びてる足が好きなんや」

「…っ…ヘンタイ!!」

「そんな一言て…。そこはもうちょい言い返してくれななぁ」

「だって事実…。でもじゃあ何で向日さんは…?」

「…な、何でやろなぁ~?俺も知らんわ~」

突然あたふたする忍足。
そんな忍足を当たり前のように朋香は見抜く。

「…隠しても無駄ですよ?さぁ、白状してもらおうじゃない!」

「は、白状やなんて…俺、何もー」

「何も知らないとは言わせへんやでぇー」

「何ちゅう関西弁や!」

「だってー…忍足さん嘘付いてるでしょ!バレバレなのよねー」

朋香はスカートと足を戻し、椅子に腰を下ろす。
今度は腕を組み、まるで刑事の取調べのような雰囲気となった。

「…まったく朋香には敵わんな」

「で、どういうこと?」

忍足は仕方がなしに、1週間前の出来事を朋香に話す。

自分が岳人にだけ彼女の存在を話していなかったことや
それが原因で一方的に怒らせてしまったことを。

「どうりでねー。この間突然、向日さんがやって来て、
 忍足さんについて話すからどうしたのかと思ってて…」

「あの時2人で話してる思たら、このことやったんやな」

「そう。侑士はミニスカ足フェチなだけだから別れた方がいいってね。
 それでそれからずっと考えてたの」

「…本気ちゃうやろなぁ?」

「へへ…気になる?」

「当たり前や!俺は足がどうとかで朋香を好きになったんとちゃう!
 ほんまに。それだけは信じてくれ!」

「…わかってます。でも…」

「何や?」

「足フェチなのは合ってるんでしょ?」

「ま、またそのネタか…。…ま、まぁそういう時期もあったかなぁって」

「やっぱり……」

「いや、けどな、朋香の足を好きになったんとちゃうから!
 朋香が好きやねんで!!信じてや~」

「じゃあさ、私の好きな所、10個言えたら許してあげるー」

「10個!?え、えーっと、可愛いところやろ、優しいところ、
 おもろいところ、素直なところ、えーっと…えーっと……
 あ、そうや!もう全てや!!」

「え…?」

「さっきの訂正。朋香の全てが好きやから足も含む!これでええやろ?」

普段冷静な忍足の焦る姿を見て、朋香が吹き出す。
屈託のない笑顔ではしゃぐ朋香を見て忍足もようやく安心できた。

「焦る忍足さんめちゃくちゃおもしろかったー!」

「ったくホンマさっきは本気で心配したわ」

「私も足フェチの変態彼氏なのかと思ってて不安でしたよー」

「ホンマひどい言いがかりやで。
 じゃあ別れへんていう約束してもらおっかな」

「?」

どういう意味か首を傾げた隙を狙って
忍足は朋香の腕を引き寄せ、そのままキスをした。


「…//」

「…さてと、じゃあ今から彼女自慢しに行こか」

「え?どこに?」

「決まってるやろ?俺たちを別れさそうとした犯人の元へ乗り込みに♪」

「じゃあちゃんと挨拶しないとね!」

「そうそう、ちゃんと名乗ってや。
 ミニスカ足フェチ伊達メガネ男の彼女ですってな」




ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ちょっとネタ寄りな忍足×朋香でした(*´ω`*)久々の忍足弁に戸惑う…。
関西人が関西弁キャラを書くとベタな関西弁になってしまうので、
ちょっとエセ感も出さないとと思うと、仁王に次いでまぁ難しい!
この話で朋ちゃんに関西弁を突っ込んでいた忍足でしたが
そもそも私はそんな忍足に突っ込みたいくらい(笑)
学プリでの「足フェチ」「ミニスカ」トークがツボ過ぎて
ネタにしたくなったのです。変態風な忍足、意外と好きですよ♪
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