「裕太くん待った?ごめんねー!先生の話長くって…」
「全然大丈夫!ちょうど今着いたとこだし。
それより久しぶりだな!」
「お互い忙しかったもんね」
「悪いな…いつも部活で…」
「ううん、いいの。今日こうして会えただけで嬉しいし」
そう言うと、ギュッと裕太の手を握った。
「杏ちゃん//」
私と裕太くんが付き合ってちょうど2ヶ月が経った。
不動峰と聖ルドルフ。テニス部に関わっている以外共通点はなく、
出会ったことは偶然に近かった。
その日、杏は朝から泉や布川たちとテニスをするために
よく行くストリートテニス場へと向かった。
しかし、その日はまだ2人は来ておらず、
代わりに最近よく見かける青学の桃城武がいたのだ。
「おっす、橘妹!」
「モモシロくんも2人と約束してたの?」
「いや、アイツら(泉・布川)から今日部活でいけなくなったって
伝えてくれって言われてさ。まぁついでだし橘妹打つか?」
「…あ、うん…」
未だに呼ばれる“その呼び方”にムカっとしながらも、
打ち始めた杏だったが…。
「さっすが!橘さんの妹だけあるな…」
「…!!」
その時、杏の心の中で何かが切れた。
今まで溜まっていたものが爆発した感じだった。
「お、おい橘妹!どこ行くんだ?まだ途中ー」
呼び止めるその言葉ですら頭にきて…。
“帰る”と言うと、杏は桃城の顔も見ないで走って去って行った。
心の中にあるモヤモヤをかき消すかのように走った。
普段はバスを使って通う距離なのに、そこを無我夢中で走った。
走りながら先程の出来事を思い出し、さらに怒りが込み上げてくる。
(何よ…橘妹って。私は橘杏。橘妹なんかじゃない!
橘妹、橘妹って…ただ兄弟だからって何でっ…)
杏は怒りに任せて走っていたため、周りが見えておらず
前から走ってくる人に気づいた時には既に遅くー
「!?あ…っ」
「うわっ!」
正面から走ってきた人と激しくぶつかり、2人して転倒してしまう。
先に立った相手が心配そうに杏に手を差し出してくれた。
杏は謝罪とお礼を言いながら立ち上がり、相手の顔を見て驚くー
「…あ、あなた聖ルドルフの…裕太くんだよね!
ごめんなさい!ちょっと考えごとをしていて…。あ、私は橘ー」
「不動峰の杏ちゃんだよね!」
知っていたのは杏だけではなかった。
相手も自分のことを知っていてくれたことに嬉しくなる。
「俺たち同い年だよな?」
「うん!よくわかったね!」
「まぁ都大会でも見かけたし…
禁句だけど橘さんの妹ってみんな言ってたから…」
「…禁句?」
「あっいや、俺だけかも知れないけど俺、兄貴がいるから、
みんなに不二弟って言われてて…そう呼ばれるのがコンプレックスで
まぁそれで兄貴とは別の学校に通ってるものあるんだけど…。
とにかく…だから言いたくないんだ。誰かの妹とか弟って…」
「…うそ…ちょっ…ごめっ……」
杏は裕太の言葉を聞いて自然と涙がこぼれた。
ちゃんと話したことがないのに
こんなにも自分を解ってくれる人がいることが嬉しくて。
同じ境遇を過ごしてきた人にしか分からないコンプレックス…。
「あ、杏ちゃん!?ごめん、俺何か悪いこと…」
突然泣き出す杏を見て、
訳が分からない様子の裕太は自分が何かしたのではと慌てて謝る。
どうしていいか分からない裕太は
とりあえずハンカチを取り出し、杏に差し出すー
「ご、ごめんね、裕太くんがどうとかじゃなくって…
ただあまりに嬉しかったから…」
「嬉しかった?」
「私もそう言われるのがすごい嫌で…。それでちょっとさっきね…。
自分のこと解ってくれる人がいたことに嬉しくなっちゃって」
「いや、俺も会った時に名前で言ってくれて嬉しかったからさ。
逆に悪いことしたかと思って焦ったよ」
傷つけたわけじゃないことが分かり、裕太は安心して笑顔になった。
そんな笑顔を見て、杏もまた笑顔に変わっていくのだった。
「杏ちゃん、もし良かったらこれから少し出かけない?
実家に帰る予定だったんだけど…もうちょっと話したいなって」
「私も裕太くんともっと話したいな//」
コンプレックスが生み出した偶然でもある奇跡。
裕太と出会い、気持ちを解り合えたことで
コンプレックスも軽減していくのだった。
そして2人は出会いから数日後、付き合うことになった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
すっごくマイナーなのに携帯サイトで好評いただいていた裕杏です。
桃がすごい悪い人みたいに取られがちですが、
これは杏や裕太が特別に抱いているコンプレックスなので
分からなくて当たり前ですよね(*´ω`*)
このネタは原作を見て裕太だけにスポットが当てられているけど
杏ちゃんも同じじゃない?って思っていたんです。
気になる人は気になるのかなー。皆さん名前で呼んであげましょう笑
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