「ねぇ朋ちゃーん、そろそろ俺と付き合おうよー」
まただ。
ちょっと練習試合で知り合ったからってこればっかり。
最初は驚いたけど、今じゃもう…なんていうか、お決まりって感じ。
「だから何度もイヤって言ってるじゃないですか」
「何でさー?こんなにもキミのこと好きだって言ってるのに~」
「どうせ他の子にも言ってるんでしょ。
乾先輩から聞いたもん、色んな子に声かけてるナンパ魔ってね」
「げ…そんな情報が流れてるなんて…心外だなぁ」
「でも事実でしょ。乾先輩のデータはいつも正しいんだから」
「そんな~今はキミ一筋だって~」
「信じません!」
「じゃあさ1回デートしようよ!今日休みだから帰りに待ってるから!」
「しつこい人って嫌われますよ」
朋香はそう一喝すると、スタスタを正門をくぐって教室へ向かった。
何でも本日、山吹中学校は創立記念日か何かで休みらしい。
私が休みなら絶対昼まで寝てるのに…ホント変な人。
千石清純さん。山吹中学校の3年生。
以前、青学へ偵察に来て会って以来、何故か好意を持ってくれたのか
はたまた誰でも良かったのか、度々こうしてデートに誘ってくる。
乾情報のナンパ魔ということを信じて本気にせず
いつも適当にあしらっていた朋香だったが
この日はいつものようにはいかなかった。
教室に入ってひと息ついた時に、クラスメイトから1枚の紙を貰う。
「これさっき門の所で千石って人がお前に渡してくれって」
「?」
さっき話したところなのに…と怪訝そうな表情でメモを受け取り
机の下でこっそり中を開いてみるとー
“一度話がしたいから来てくれないかな?
これで最後にするから。放課後門の前で待ってます”
「……最後…か」
そう思うと何だか少し寂しい気がした。
「朋ちゃん?どうかしたの?」
「あ、桜乃。…あのね、例の千石さんから今これもらって…」
何だか迷っている自分が嫌で桜乃にメモを見せてみた。
「…ホントに好きなんだね、朋ちゃんのこと」
「っ…どこにそんなことが!」
「だって半端な気持ちでこんなこと…できないもん。
千石さんのこと、嫌いじゃないんでしょ?」
「嫌いとかじゃなく…なんて言うか…桜乃だって嫌でしょ?
あんな…ほら何度も何度も付き合おうだとか好きだとか言われたらさ」
「それだけ朋ちゃんが好きってことじゃないのかな?
私、あまりはっきり言えないからちょっと羨ましいかも…」
授業が始まってからも桜乃に言われたことを考えてみた。
“一度話がしたい”か…。
確かにいつも私は話もせずに一方的に拒否をし続けてきた。
乾先輩のデータや噂ばかり真に受けて。
実際そうだとしても、言い訳ひとつ聞いたことがなかったな。
“最後”と書かれてあったことや桜乃の話を聞いて、
朋香は放課後会ってみようと思ったのだった。
そして放課後ー
ホームルームを終え正門へ向かうと、
朋香が来たことで笑顔になる千石が待っていた。
「来てくれてありがとう!」
「…最後って書いてあったから」
「嬉しい。やっぱ俺はラッキー千石だな♪」
「もう…すぐ調子に乗るんだから…
それより話は歩きながらでもいいですか?ここじゃちょっと」
「…だね。じゃあのんびり歩いて帰ろっか」
2人は他の生徒から離れるように反対側の道を使って歩いていく。
何をどう切り出したらいいのか分からず沈黙を続ける朋香。
千石が先に口を開くー
「俺はさ、自分でも知ってるよ。
ナンパ魔って言われていることも軽いって思われてることも」
「…それは当たってるからでしょ?」
「うん…」
そう頷いた千石を見て、朋香は思っていた以上にショックを受けた。
乾から聞いた情報や噂が合っていたと思い知らされたからだ。
だが、千石の口から予想外の真実が話されるー
「過去の話…だけどね」
「…過去の話?」
「そう。そういう時期もあった。
だけど俺は今の姿を朋ちゃんに見て欲しいんだ。
俺は真面目な性格じゃないから自分の気持ちを伝えるのも
いつもあんな形でしか伝えられない。
だけどキミを想う気持ちは真面目なものだよ」
「千石さん…」
今まで聞かされてきた数々の言葉よりも、
この素直な言葉に気持ちが揺れ動く。
「いっぱい嫌な思いさせてごめんね。
最後にちゃんと気持ちを伝えたかったからさ。
これからも部活では来るけど付きまとったりはしないから安心してね」
最後まで冗談を混じらせて笑顔でさよならを言う千石。
そんな姿を見て、思わず引き止めてしまった。
「ちょっと待って!」
「!?」
「…考えたんです。私、確かにイヤでした。
こんな風に頻繁に現れて冗談みたいな言葉をたくさん言われて…」
「ホントごめー」
「だけど!もうそれがないって考えてみると寂しいって思えたんです。
イヤだったのに、寂しいって。
これってもう気になってるんですよね、千石さんのことが」
「朋ちゃん…」
「さっきの言葉凄く嬉しかったです。
今までのどんな言葉よりも一番嬉しかった」
「ありがとう……朋ちゃん大好き!」
「きゃっ」
突然抱きつかれ驚く朋香だったがー
(…ま、いっか)
何か振り回されてばっかりだけど…悪くない。
今まで正直な気持ちに目を瞑っていただけなのかも知れない。
「朋ちゃん」
「はい」
「改めて…キミが好きなんだ。付き合って下さい」
「……はい///」
千の言葉よりもたった一つの言葉。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
朋ちゃん関係の他校CPで一番最初に好きになったのが千石×朋香でした☆
明るい2人、そして公式接点あり!そりゃあ好きになる←
それなのに、あんまり書いていなかった気がします(*ノωノ)
千石はナンパ魔だけど、付き合い出したらその子しか見えないタイプ
なんじゃないかなぁって脳内設定で書き上げました。
これも学プリ見て書いたんだったかなー。好きな子には一途な千石くん。
今度はもっとラブラブな2人を書いてみたいものです。
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