終礼のチャイムが鳴り、部活に入っていない生徒たちが下校していく中、
朋香は正門から少し離れた場所で友達と別れ、
いつものように彼氏である岳人の迎えを待っていた。
通りゆく友人に手を振りつつ、時計を見てため息をつく。
学校帰りにデートをする時は、決まって青学での待ち合わせだったのだ。
(この待ち時間があるなら氷帝まで行くって言ったのに…)
そんなことを考えながら、ひたすら岳人を待ち続ける。
そして、下校する生徒が減り、朋香も待つことに飽きてきた頃、
ようやく岳人は息を切らしながら自転車でやってきた。
「朋ちゃんお待たせ!」
「おそーい!」
「悪かったって!ホームルームが長引いてさ」
恐らく猛ダッシュをして来たのだろう。
暑い暑いと時折、手で顔を仰ぎながら自転車を押す。
そんな岳人を見て、朋香は何度か言い続けてはいたが
改めて提案をしてみた。
「この間も言ったけどさ、やっぱり私の方が終わるの早いし、
この後、来た道に戻るなら今度から私が氷帝に行くよ」
その提案を聞き、一瞬にして岳人の顔色が変わる。
「っそれは前にも言ったけど絶対ダメ!ぜーったいダメだからな!」
「…もう…いっつもそうなんだから…。
それにそもそも何でダメなのかも教えてくれないって何か変よ?」
「っと、とにかく!
俺が好きで迎えに行ってるんだから気にしなくていいから!な?」
「……う…ん……」
結局、岳人の言う通りに納得せざるを得なかったが
デート中も朋香の心の奥底ではモヤモヤが残っていたのだった。
その日の夜ー
モヤモヤはあったものの、デート自体はいつもと変わらず
楽しく過ごすことができて安心した。
朋香は家に帰って、手帳に次の約束を書くと、
改めて今日のモヤモヤや岳人のことを考えてみた。
(…にしても、何であそこまで反対するんだろう…。
もしかして氷帝に別の彼女がいるとか…?ま、まさかね…)
付き合った当初は彼氏が迎えに来てくれることに喜んでいたものの
これまで一度も朋香が氷帝に来ることだけは許さなかったのだ。
あまりに反対し続けられるので、余計なことまで考えてしまう。
“まさか”なんて思いながらも、次第にそれが不安要素に変わってしまい
朋香は手帳を閉じ覚悟を決めると、来週のデートの日は
岳人に内緒で思い切って氷帝まで行ってみようと心に決めたのだった。
そして1週間後、約束していたデートの日。
朋香は学校が終わると、バスに乗り氷帝学園まで岳人に会いに行く。
もちろん岳人のことは信用していたし、器用なタイプではないことも
分かっていたので、二股なんてことはないだろうと思ってはいたものの
来てはいけない理由を一切教えてもらえず、
いつも頭ごなしにダメだと言われることにモヤモヤが募っていた。
(…ってちょっと早く着きすぎちゃったな…)
早く会って確かめたい!
その思いから、終礼のチャイムと同時に学校を出たため
思いのほか早く到着してしまい門の前で立ち尽くす。
ーが、せっかくなので部活の様子でも見てみようと
裏門からこっそり侵入すると、テニスコートへと向かう。
そこへー
「おっとその制服、青学の子やん。偵察でもしにきたんか?」
「…っわ…驚かさないでくださいよ!」
「それを言うならこっちの方やわ。自分こんな所で何してるん?」
「忍足さんですよね?岳人先輩から色々聞いてますよ」
「岳人?…てことは、自分がアイツの彼女ちゃんか!
俺もよぅ聞かされてるわ。ツインテールのかわいい子ってな」
「そ、そんな///」
「照れんでええ。最近のアイツ8割がノロケで、2割がテニスやからな。
パートナーとして情けなぁ…そんな風に育てた覚えあらへんのに」
「アハハ…岳人先輩から聞いてた通り忍足さんっておもしろいですね!」
「おもしろい?アイツ俺のことそない言うてたんか…。
俺はてっきり侑士カッコイイ!侑士最高!とか期待してたんやけど」
普段から氷帝学園のテニス部のことはよく聞いていたので
忍足ともうすぐに打ち解けられ、岳人の話で盛り上がる。
と、そこへー
2人の声を聞きつけ、部長の跡部までやって来た。
「おい忍足、なに無駄話してやが……
へぇ……青学からこんなスパイが送られてくるとはな」
「この子なぁ岳人の彼女ちゃんや」
「…そういや写真見せられたな。でも実物の方がカワイイじゃねぇの」
「ほらな。アイツ部員みんなに言うてるんちゃうか。
俺にも誕生日こんなんもろたとか、昨日のデートがどうとか、
いっつも自慢ばっかりやねんで」
「照れちゃいますね//…って岳人先輩いつの間に!」
朋香が2人に囲まれて話をしていると、
いつの間にか部活を終えた岳人が来ていた。
不機嫌そうな表情で近づき、一言“行くぞ”と言うと
勢いよく朋香の腕を掴み、その場を急ぎ足で離れる。
テニスコートから離れても無言で歩き続ける岳人。
学校横の自転車置き場までやってくると、
手を振り払って朋香に怒りをぶつけた。
「なんで来たんだよ!?」
「っそ、それはー」
「俺あれほど言ったよなぁ!こっちには来るなって」
ケンカ腰でそう言われ、朋香も怒りのスイッチが入る。
「勝手に来たことは謝るけど、そんなに怒らなくていいじゃない!
岳人先輩の友達とも仲良くなれて楽しかったし、
そもそも何でそんなに拒むワケ?理由も言わずそんなこと…」
今度は朋香が不機嫌になり、岳人を睨んで感情を爆発させる。
加えて、先ほど腕を思いっきり掴まれて連れてこられたので
その痛みもあってか、目には微かに涙があり、
岳人は自分の態度に反省をする。
「…さっきのは悪かった…ごめん。腕、大丈夫か?」
「…」
「…こんなこと言うと情けないって思われるだろうけど、
俺が嫌だったのは氷帝に来られることじゃなくて、
その…朋ちゃん可愛いからこっちに来たら、
さっきみたいに跡部や侑士たちが絶対声かけるって思ってて…。
俺、アイツらと比べると背も低いし、
カッコ良くないし…取られると思ってた。
…だから…その…っあぁー!!もう、俺カッコ悪いな…」
それを聞いて朋香の表情が一気にぱっと明るくなる。
頭を抱えて落ち込む岳人に近づき、ぎゅっと抱き締めた。
「もう怒ってないです」
「…許してくれるのか…?」
「はい!だって理由が知れてスッキリしました!
私、あそこまで断固として拒否する理由がわからなくて
何か二股とかあるんじゃないかって良からぬことを考えてしまってて」
「二股ぁ?んなこと俺がするわけないじゃん」
「だって…先輩は自分のことカッコ良くないって言うけど
私にとっては、すっごくカッコイイんだから心配になるもん」
そう言って膨れる朋香を見て岳人も笑顔になる。
「…さっきはホント怒って悪かったな。
でも幻滅しただろ?男のクセに焼きもち焼いたりさ…」
「全然!逆にもーっと好きになりました!」
「…ありがと。俺は怒る相手間違ってたな。
明日、侑士と跡部によーく言い聞かせてやるからな!」
「…でも忍足さんも跡部さんもいい人ですよね。
先輩が私のこと、どれだけ好きなのか教えてもらえましたもん」
「え!?アイツら何て言ってたんだ?」
「ヒーミーツー」
「おい!気になるだろーっ」
すっかりケンカの熱も冷めた2人。
朋香は岳人の手に自分の手を重ねる。
「…じゃあもう遅くなったし、今日は一緒に歩いて帰るか!」
「…うん♪」
そして夕日が染まる中、2人は手をつないで帰った。
仲直りの意味を込めて…。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ジェラシー全開の岳人×朋香でした(*´▽`*)
ちなみに元々は遥か昔に別の超マイナーCPで書いていたものを
岳朋に書き直したものだったりします(笑)
結果的に岳人は嫉妬しぃなイメージなので、このCPで良かったかな。
特に氷帝には男前な方が勢ぞろいなさってるので…
ま、私なら迷わずべー様もしくは忍足を選びますけどね( *´艸`)
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