俺は今まで数々の女から告白をされてきた。
だが、どいつもこいつも似たようなやつばかり。
見た目や家柄だけに興味を持ち、
俺の試合を見ようともしない女には興味が沸かない。

だからこそ、青学との練習試合で試合をしている選手以上に
一生懸命応援している朋香を見つけた時、俺は必ず手に入れると誓った。


そしてー手に入れた。


「おそーい!」

「だから車で来たんだ。ほら乗れよ」

「すいません、いつも…」

「気にするな。それより今度氷帝で
 青学との練習試合があるんだが、どうする?」

「もちろん行く!」

「…だろうな。ただし氷帝側には来るなよ?
 忍足によると女の嫉妬は怖いらしいぜ」

「跡部さんと付き合ってるんだもん。それくらい覚悟してますよ」

「さすが俺の惚れた女だ」

…とは言っても正直不安なのは俺だ。

これまでにも何度か他校の女と付き合ったことはある。
だが、どんないい女でも女共の妬みの怖さに負けて
結局長くは続かない、というお決まりのパターンだった。

ボディガードを雇ってもいいが、
この朋香があっさり承知するとは思えない。
それに勝手に手配しようものなら、
逆に怒って、二度と試合を見に来ないかも知れない。

朋香だけは何としてでも守らないと。
跡部はそう心に決め、来週に向けての練習に励んだ。




そして迎えた練習試合の日ー

過去の出来事を思い出し、不安になる跡部だったが、
朋香は跡部のそんな不安を見事に一掃したのだった。


手洗い場の前で、氷帝の制服を着た女が数人いるのが目に留まった。
嫌な予感がしつつ、気付かれないように、そっと近づいてみる。


(まさか…っあの真ん中にいるのは…!)


氷帝の制服に紛れて真ん中に1人違う制服が見えた。
青学の制服、ツインテール…朋香か…!


跡部に見られているとは知らず、氷帝の女子生徒が朋香に絡む。

「アンタね、跡部さまの彼女」

「やだ、ただのガキじゃない」

嫌な予感は的中した。
『跡部の彼女』というだけで浴びせられる罵声。

(あいつら…)

「アンタ本当に彼女?いかにも庶民って感じ。
 顔もスタイルも何もかもが釣り合ってないのに気付かないかなぁ」

「跡部さんの汚点よねぇ」

跡部はその場面を目の当たりにして、眩暈を覚える。

今までの彼女もこんな目にあっていたのかと、痛感した。

これまではこんな風にその場にいたことがなかった。
聞いた話と、実際目の当たりにしたのだと、違いが大き過ぎる。

朋香との関係の結末が見えた瞬間だった。


しかし、その時ー


「何さっきからごちゃごちゃ言ってるのよー!
 もう、人が黙って健気なフリしていたら調子に乗っちゃって!!」


ー!!


「跡部さんの彼女だからって何よ!事実なんだから仕方ないじゃない。
 それに釣り合わないってのは私が1番わかってるわよ!
 っていうか、ガキとか言うけど1つくらいしか変わらないんだから!」

元々正義感が強くて、タフな朋香だが、
案の定、一方的に言われたことが頭にきたのだろう。
何かが切れたかのように氷帝の女子生徒たちに立ち向かう。

その様子を少し離れたところから見ていた跡部。
思わず朋香の勇敢な様を見て吹き出してしまう。

「…さすが過去最高の女だ」

落ち込んだり、泣いたりしない。
無茶なくらい真っ直ぐに立ち向かっていく朋香。

そんな姿を見て、更に惚れてしまった跡部だった。


「…おい、そのくらいにしておけよ」

「「「…!!跡部さま…」」」

「あ…」

「ほら、もう気が済んだだろ」

朋香の頭をポンと叩くと、引き寄せる。

「もしかして…聞こえてました?」

「ああ、お前の一喝がな」

「…///」

「それと……お前らのウザさがな!」

「「っ跡部さま!!」」

「二度と俺様と朋香に近づくな。
 俺様が惚れた女だ、口出しするんじゃねぇ」


この事件以降、朋香が氷帝に来ても何かされることはなくなった。

もっとも陰口や嫌味は引き続き言われることもあったが
真剣に試合を応援している朋香の耳には聞こえるはずもなかった。

そしてこの事件以降、よりいっそう跡部は朋香に惚れていったのだった。


「さ、そろそろ帰ろっかな」

「…待てよ」

試合も終わり、ベンチで少し話をしていた2人。
帰ろうと立ち上がった朋香の腕を引くと、再びベンチに戻す。

「わっ」

「もう少しいいだろ?」

「…はい//」

そう頷いた朋香の隙を見て唇を奪う。
まるで、まだ帰さないと言わんばかりに
吸い付くようなキスを何度も何度も、繰り返す。

「…お前は最高の女だ」

「…跡部…さん///」

氷帝の女子生徒を一喝して蹴散らした朋香だったが、跡部を前にすると、
一挙一動に顔を赤らめ、ただの普通の女の子に戻るのだった。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
跡杏同様に好きな跡朋でした♪
パワフルな朋ちゃんも跡部の前ではかわいい普通の女の子。
2人のパワーバランスが好きです☆
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。