慌ただしい音と共に上忍待機所の扉が開く。
幸いほとんどの上忍が任務へと出ていたため、
下忍である山中いのが入ってきても目立たなかった。
息を整え辺りを見回し、どこか隠れられる場所を探す。
そして、ちょうど入り口からは影になっている場所を見つけて座り込む。
そこへやってきたのは不知火ゲンマ。
中忍試験で顔を合わせているので下忍だと分かったようだ。
「おい、ここは上忍待機所だ」
「…!!」
「下忍がこんな所にいるのが知れたら、どやされるぞ」
咥えている千本を上下に動かしながらゲンマが上から見下ろす。
「…すいません」
「何だ?まるで誰かから逃げてきたかのような様子だな」
「…シカマル!」
「あぁ?」
「シカマルから逃げてるんです…もう私、どうしていいか…
こんなこと初めてだし…そんなー」
パニックになっている様子で次々話し出すいの。
怪訝そうな顔をしていたゲンマだが、
あまりの動揺具合を見ていると、心配になり口を挟む。
「ちょ、ちょっと待てって!オレはお前の友達じゃねェんだぞ。
そんな一気に色んなこと言われても何が何だか分からねェっつーの」
「あ…私ったら混乱し過ぎてゲンマさんに何てこと…」
「話したいっつーなら聞くぞ。任務がキャンセルになって暇だからな」
そう言い、いのの横に腰を下ろす。
大人の余裕を垣間見たいのは、理由を打ち明けた。
「私、少し前からシカマルと付き合っているんです。
シカマルとは幼馴染で小さい頃からずっと一緒にいて
正直付き合っているのも友達の延長みたいに楽しんでいたんです。
だけど付き合うってことは、その…キスとかするワケで…
だけど、突然来られると好きなのに何だか変な感じがして…それで…」
「…っく…」
必死になって話すいのを見て堪えきれずに吹き出す。
「ちょっと笑わないで下さいよー!!私は真剣なんですよ」
「悪ぃ。でも何かそれって幼馴染とか関係なく誰でも起こりうるだろ?
それをこんな真剣に考えているヤツがいるって知ってな…」
「私…どうしたらいいですか?」
「もしかしてそれがここへ逃げてきた原因か」
「…実は…。きっとシカマル傷つけた」
「だろうな」
「私、どうしたら…」
「そういう雰囲気になった時は黙って男に任せりゃいいんだよ。
そしたら自然と次から自分で求めていくって」
「も、求めて///」
「とにかく。覚悟を決めるこったな」
そう言われ覚悟を決めるいの。
だけど心のどこかにまだ迷いがあるのか、
不安な顔は変わらないままゲンマに頭を下げる。
「あの…練習台になって下さい」
「…?」
「私に…キスして下さい」
「なっ…ダメだ!相手がいるんだったら相手にして貰え。
それに初めてっつーのは貴重だぞ。“特別な瞬間”は取っておけ。
噂で耳にしたが、ナルトのファーストキスは男だったとか。
うわ…想像しただけで悲惨だな」
今でも時折話題になる、アカデミー卒業前の
サスケとナルトのキスシーンを思い出し、いのの表情が和らいだ。
「…ですね。わかりました」
「ほら、シカマルのところへ行って謝ってこい」
「はい!ありがとうございます!」
ようやく覚悟決めたいの。
ゲンマに深々とお礼を言った後、シカマルの元へ走っていく。
いのが去っていた後ー
「…ゲンマが生徒指導なんてね」
いのとゲンマの話が聞こえていたようで、
微笑みながらシズネがやってきた。
「笑うな//」
「ふふっ」
「アイツら気持ちばっか大人で嫌になる。ほら、こっち座れよ」
「ええ」
「大人になればこんなの当たり前なのにな」
そう言ってシズネを引き寄せキスをした。
いのはシカマルを探し、よく2人で過ごす建物の屋上へと向かった。
いつもならこんな気持ちの良い天気の時は、ここで2人で横になって
流れゆく雲や空を見て、のんびり過ごしている2人だけの場所。
「シカマルー!」
いのが呼ぶと動く影が見えた。
案の定シカマルが寝転び空を眺めていた。
声に気がつき、いのを見つけると体を起こす。
「…いの」
「さっきはゴメン!!
ホントそんなつもりなかったのに突然でビックリしちゃって…」
「いや、オレこそ…」
「して!」
「なっ…」
「さっきの続き。私、心の準備できたから…」
「…いいのか?」
コクリと頷くと目を閉じる。
そんな無防備ないのにそっと近づくと、いのの唇に重ね合わせた。
唇が触れ合った瞬間、体の芯から体温が上昇したのがわかった。
周りの音が聞こえなくなり、
まるで時間が止まっているかのように思えた。
目の前にいるシカマルの熱が伝わってくる、
胸が弾けそうなくらい鼓動が高鳴る。
(これが“特別な瞬間”なんだな。)
たった一度のファーストキス。
いのにとって初めての甘い甘い思い出となったのだった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
付き合って間もない幼い2人の設定。下忍になって間もない頃かな。
いのちゃんは気が強くて、プライドが高いけど、
中身は純情な乙女だと…ま、願望もありますが。
ゲンマが生徒と関わるシーンが書きたかっただけでもあります(笑)
ゲンマって分け隔てなく生徒に接してそうなので。
もちろんゲンマが出るって事はシズネちゃんも出るってワケで。
何だか私の趣味がいっぱい詰まった作品になりました。
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