「ありがとうございます。私1人だったら何往復していたことか。
 この間から手伝ってもらってばかりですね」

「いえ、ボクも五代目に用があったものので。
 …さてと、ボクはそろそろ帰りますが、シズネさんはまだー」

「いえ、私ももう終わりです。
 …あ、そうだ!いつものお礼に何かご馳走させてください」

「ええ!?そ、そんないいですよ」

「いつもカカシ先輩に奢らされてるって聞きましたよ」

「ただ口車に乗せられてるだけなんですけどね…ハハハ」

「まぁご馳走って言っても綱手様とよく行く居酒屋くらいしか
 私も知りませんし、気にしないでくださいね」

「すいません…では、お言葉に甘えて…」




軽い付き合いのつもりで承諾したヤマトだったが、
この後、承諾したことを後悔することになる。

「ふぅ~やっぱり仕事を終えた後のお酒は最高ですね」

「ふふふっだぁーから誘ったのよぉ~」

「ちょ、ちょっと大丈夫ですか?お水にした方が…」

「なぁに言ってるのよぉ、私はだぁーいじょーぶ」

「…ハァ」

時計を見ながらヤマトは思った。

明日も朝からの任務なのに…
ご馳走してもらう手前、家まで送らないとマズイしなぁ…。

飲み始めて早々酔い始めるシズネを見て溜息をつく。

こんなに飲むとは思わなかった。

ヤマトは忠告こそしたものの、相手は酔っ払いだ。
もちろん通じるはずもなく、シズネは更に飲み続けー


「ほら、そろそろ帰りますよ」

飲み始めて2時間が過ぎた頃、さすがに明日に響くと思ったヤマトは
店を出ようと勘定を済ませる。結局支払いはこっち持ちか、
とシズネが酔い始めた頃には予想はしていたが、溜息をつく。

だけど、シズネを置いて帰ろうとは思えないのは、
先輩後輩だからではなく、何故か気になってしまうのだったー。

足がもつれて歩けそうもないシズネを見て、
外へ連れて行くと、背中に乗せて歩く。


(この方が早いな)


「ヤマトたぁいちょう」

背中に指でヤマトと書く。いつもは綱手様の横で
凛々しく職務をしているあのシズネさんが…と思うと笑みを浮かべる。

最初はどうなることかと、来たことを後悔したヤマトだったが
次第にこの状況さえ楽しくなってきた。
普段と違う今までに見たことのないシズネを知り、
もっと知りたい、ずっと見ていたい、もっと色んな面を知りたい…
そんな風に思ってしまうのだった。


(あれ…ボクも酔ってるのかな?)


「ーで、シズネさん、家はどっちですか?」

曲がり角に辿り着いたのでシズネに問いかける。

ーが、返事はない。

もしかして、と首を横に向けて見ると、
案の定、ついさっきまで陽気に話していたシズネの寝息が聞こえた。

「ええ!?そんなぁ…」

家を聞くために起こそうかと少し悩んだが、
あまりに気持ちよさそうな寝息が聞こえるので、
仕方がなしに、ヤマトは自分の家へと向かった。




家へ着くと、とりあえずシズネをベッドの上に寝かす。

「まったく…かわいい人だ」

赤く火照った顔を撫で、
背負っていたことにより乱れてしまった着物を直す。
そして布団を引っ張り出し、シズネにかけた。

(これじゃすっかりシズネさんに酔ってるみたいだな)

あんなに明日の任務に響くと嫌だとか文句を言っていたのに、
気が付くと、すっかり虜にされてしまった。
任務終了後は眠気に襲われ、一刻も早く帰って休もうと思っていたのに。

ヤマトはグラスにお酒を少し入れてくると、
気持ちよさそうに眠るシズネの姿を見つめ、
その日最後のお酒を満足そうに締めくくった。




次の日、目覚めるとシズネの姿はなく、代わりにメモが置いてあった。

“結局迷惑かけてしまってすいません。朝御飯にでもどうぞ”

机の上を見ると攻撃された後のような食パンが瀕死状態で発見された。

「そういや料理できないんだっけ…」

黒こげになった食パンを見て、再び笑みを浮かべるヤマト。

年上の女性を美しいと思うことはよくある。
だけど初めて年上の女性が可愛いと思えた。

そりゃあ好きになる人、多いな。

さり気なく伝わる巷の噂に便乗し、
ヤマトもシズネに、はまっていくのであった。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
アニナルおまけでの酔っ払いシズネを見て
書きたい衝動に駆られて勢いで書き上げたヤマ→シズ。
私的に真っ赤になって目がとろーんとしてるシズネも萌えるけど、
性格がごろっと変わってしまうようなシズネもイイ。
ヤマト×シズネでも良かったけど、とりあえずはヤマトの片思い。
食パンネタはゲンシズでも使った「シズネ料理下手だと萌える説」より←
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