恋をすると苦しい。
そう思った時、人はもう恋なんてしないーと思ってしまうのだろう。
突然のことだった。
シズネが任務報告書のを書きに行こうと上忍待機所へ行った時ー
思わず扉を開ける手を止めてしまった。
そこで話す紅とカカシの会話を立ち聞きしてしまったのだ。
正確には聞くつもりなんてなかったのに、耳に入ってきた。
「オレ、サクラが好きなんだよね」
「なに?」
「前まで何とも思わなかったのに、最近キレイだなぁって…意外?」
「当たり前よ。カカシがそんなこと言うなんて…」
ー!!
思わず持っていた書類を落としそうになる。
(カカシ先輩がサクラを…そんな……)
相手に想う人がいると知り、動揺する。
胸が痛い。
私ーやっぱりカカシ先輩が好きなんだ。
気持ちに気が付いたと同時に遮断される想い。
苦しい。
相手が自分よりも遙かに年下の女の子だったから?
違う。
相手が誰であっても、この気持ちになった。
今まで過ごしたカカシとの時間が頭の中で流れる。
上忍待機所でよく話をした。一緒にご飯を食べに行ったりもした。
お酒が弱い私に、アルコールの低いお酒を薦めてくれた。
酔った私の手を引いて家まで送ってくれた。
握った手は優しく温かった。
だけどあれは幻だったのー?
あまりにショックで、その場を駆け足で去る。
そして薄暗い古い書庫に入ると、勢いよく扉を閉めた。
扉に持たれて座り込む。
自然と涙がこみ上げてきた。
声を押し殺して泣き続けるシズネ。
「…っ……」
これが失恋の痛み?
何も伝えられずに終わった恋。
後悔をする間もなく終わった恋。
失くしたものの代償は大きい。
もう恋なんてしないーそう思った。
苦しくて苦しくて…息もできないくらい胸が苦しい。
声を押し殺して泣いたことにより、
過呼吸で呼吸が上手くできずに、意識が朦朧としてくる…
視界が曇り、苦しくて座ったままその場に倒れこむ。
そこへー
微かに見えた人影…
こんな誰も来なさそうな書庫へ…一体…誰…?
「シズネ!シズネ!!おい、しっかりしろ!!」
この声ーカカシ先輩?
声の主はカカシだった。
カカシはシズネを抱き上げ、座らせる。
「カ…カシ先輩…」
「シズネ!これを口に当ててゆっくり呼吸をするんだ」
肩で不規則な息をして苦しそうなシズネに
カカシは近くにあった紙袋をシズネの口に当てて呼吸をさせた。
ゆっくりゆっくり呼吸を整えていくシズネに寄り添い
背中をさすって、安心する言葉をかけ続けるカカシ。
幸い、軽度の過呼吸だったため、
暫くすると顔色が段々良くなってきた。
「先輩……ありがとう…ございます」
「大丈夫か?」
「ええ…もう大丈夫です」
涙を拭い、無理に笑顔を作る。
ーが
「大丈夫じゃないでしょーよ?顔、引きつってるよ」
「ちょっと体調が悪かっただけなので…すぐ良くなります。
迷惑かけてすみませんでした。…そろそろ戻りますね」
カカシと2人きりの空間がこれ以上耐えられそうになく、
そう言うと、足早に去ろうとするシズネ。
…が、
扉の前で立ち止まり、気になっていたことを尋ねる。
「そういえば…何で私がいたって分かったんですか?」
単純に疑問からの質問だった。
普段この古い書庫にはシズネくらいしか立ち寄らない上に
いくら過呼吸になっていたとはいえ、扉はしまっていたのに…。
不思議そうな顔をして尋ねるシズネに
カカシは近づくとそのまま強く抱きしめた。
「え…///」
「オレはいつでもシズネのことを見ているからだよ」
「…な、何言ってー」
「シズネ、好きだ」
「////だって先輩サクラがー」
「サクラ?」
「だってさっきサクラが好きって」
「?…もしかして紅と話していたやつか?
あれは花だよ、サクラの花。
今の時期あの部屋からよく見えるんだよね」
「だってそんな………な、なんだ…サクラ…だったの」
安心のあまり、その場に崩れるように座り込み
早合点して落ち込んだ自分にあきれるように顔を覆った。
「私…ホント周りが見えてなかったんだ」
「ん?」
「カカシ先輩のことが好き過ぎて、周りが見えなくなっていたんです」
そう言って落ち込むシズネに近づくと
カカシはシズネの顎を軽く持ち上げ、その唇に何度もキスを重ねる。
「…セン…パイ///」
「嬉しいこと言ってくれるからつい…ね」
顔を赤らめ恥ずかしそうに応じるシズネ。
恍惚した表情がカカシの欲を掻き立てる。
「シズネ…このままもう少しここにいない?」
カカシの問いにコクリと頷く。
「…カカシ先輩」
「んー?」
「恋って苦しいだけじゃないんですね」
「…ああ、そうだよ。今からもっと楽しくなるからー」
そう言ってニヤリと微笑むカカシ。
この後、暫く2人がこの部屋から出てこなかったのは言うまでもない。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初カカシ×シズネでした。相互して頂いていた
カカシズ好きさんの作品を見て以来、ゲンシズとは
また違ったカカシズの世界にどっぷりはまってしまって書いた作品。
SSならではの語弊ネタ。サクラと桜の発音は違いますが、
そこはSSネタなので御愛嬌(笑)
うっかり妹弟子に負けたと勘違いしてしまったシズネちゃんでした。
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