ジメジメとした蒸し暑い梅雨の季節が終わり、
木ノ葉の里では例年に増して暑い日々が続いていた。

熱中症さえ危惧されている真夏日に、
上忍待機所の入り口では、さらに熱く喧嘩をしている2人がいた。

「絶対ダメだ!」

「別にいいじゃない、こんなに暑いんだから」

「ダメっつったらダメだ!!」

「もう…頑固!意地っ張り!」

ゲンマとシズネ。
付き合って長く、周りから理想のカップルとも言われている2人が
こんな風に一目気にせず言い合うのは珍しいことだ。

そこへ、通りかかった紅が入り口で言い合う2人を見つけて止めに入る。

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着きなさいって!」

「……スミマセン」

紅に止められ、暫し休戦をする2人。
喧嘩の原因を尋ねられ、シズネが経緯を話す。



「…なるほどねぇ…夏だから裾を短く…。
 いいじゃない。私も任務以外の時はずっとこの格好よ?」

自らの服装を指差しゲンマを説得するが、ゲンマの意思は変わらず。

納得いかない表情のまま腕を組み、険しい表情でシズネを見つめるが
2人に挟まれた紅が任務のため、その場を去ると
再び2人のスイッチが入り、互いの言い分をぶつけ合う。

「ゲンマは何がそんなに気に食わないの?
 私はただ暑いから裾を短くしようかなぁって言っただけなのに」

「オレはだなぁ…!」

再びケンカの火が点こうとした時、
今度は任務報告書を書きにやってきたカカシが止めに入る。

「はーい、ストップストップ!
 こんな暑い日にわざわざ喧嘩しなくていいでしょーよ。
 痴話喧嘩ならよそで―」

「カカシさん!いやこれはー」

「あー暑い暑い…オレも短くしよっかなー」

独り言のようにそう呟くと中へと入って行った。


(…何考えてんだあの人は)


(その前に口布取った方がいいんじゃ…)


カカシの発言で怒りも治まったように思えたが、
カカシが去り、再び2人きりになると話題は元に戻る。


「とにかく、お前の足なんて見せられても誰も見やしねェって」

「…っ//そういう意味で出すんじゃないわよ!!このスケベ!」

「あぁ!?そんなに足を見せたいのか、この露出狂!」

「ゲンマがこんな分からず屋とは思わなかったわ。もう知らない!」

最後はシズネが怒って、そのまま帰って行ってしまった。
その後姿を見て、ゲンマは小さな声で最後の怒りをぶつける。

「…オレが嫌なんだよ」




“誰も見ない”なんて言ったものの、実際はそんなことなかった。
注目するかは別にしても、シズネは五代目の秘書をしているだけあり
普段から多くの人と接する機会があるからだ。

そして、やはりゲンマの予想は的中した。
シズネが着物の丈を短くしたことはすぐに話題になっており、
イメチェンだとか、夏仕様だとか、そういった声だけではなく、
短い方が良いとか足がどうとか…
ゲンマが恐れていた木ノ葉の男共の声を耳にする機会が増えた。


(…くそ…覚えてろ)


日に日に溜まるストレスにゲンマのイライラ度が高くなる。


そんな矢先、シズネと同じ任務が入ってしまった。
S級任務になりかねないということで上忍ばかりが集められたが、
任務班を見てゲンマは眉間にしわをよせる。

よりによって事情を知っている
カカシ、ゲンマ、紅、シズネの4人だったからだ。


(……任務は任務だ。仕方がない)


いくら喧嘩中であっても、さすがは上忍。
任務中はもちろんそんなことは微塵も感じさせない
完璧なチームワークで、任務もスムーズに終わった。

懸念していたS級任務にもならなかったため、
夕陽が沈みだす頃には木ノ葉に帰って来ることができた。



「もうだいぶ日が落ちてきましたね」

「そうね」

「あ、そうそう。ゲンマとシズネさー。
 今日ここで夏祭りあるらしいんだけど、2人で行っておいで」

「え…いや、何で2人なんですか!?それなら4人で…」

「バカね、今日はカップル限定なのよ」

「…カ、カップル…」

「そ。オレだって行けるなら紅連れて行ってもいいけど、
 そんなことしてアスマに恨まれるのは勘弁だしー」

「ゲンマ、後は頼んだわ。シズネも私たちの分まで楽しんでおいで」


そして紅とカカシによって2人きりにされたゲンマとシズネ。
朝から喧嘩をしてギクシャクしていた2人だったが、
お祭りという場所はこの気まずい雰囲気を消し去ってくれる。


「……何だか落ち着くわね、この雰囲気」

「オレといるからじゃなくてか?」

「…そうかもね」

「…………シズネ」

「ん?」


少しの間が空き、同時に朝から思っていたことを口に出す。


「「…ごめん」」


ーと。


「…いや、その…頭ごなしに怒って悪かったな…」

「私こそ意地張ったみたいで…ごめんなさい」


色とりどりの屋台と、カップルだらけの雰囲気。
自然と仲直りができ、気まずい雰囲気からいつもの2人に戻って行った。


「シズネ、手」

「え…あぁはい///」


人混みの中、はぐれないようにギュッと手を握り合う2人。
そのまま歩いていくと「花火会場」と書かれてある看板が目に留まる。


「ゲンマ、花火だって!」

「お、ちょうど今からじゃねーか。行ってみるか」


花火会場に着くと同時にキレイな花火が打ち上げられた。
壮大な花火を見ていると、お互い自分たちの今朝の喧嘩が
とてもちっぽけなものに感じて苦笑してしまう。


「シズネ…」

「ん?」


ゲンマはシズネの名を呼び、そっとシズネの肩に手を置き近づくも
シズネの方はというと目線がもう上に戻っている。


「すごーい!木ノ葉マークの花火よ!
 私、こんな近くで花火見たことなくて……あれ、どうかしたの?」

「……お前なぁ…」

ゲンマは呆れたように溜息をつく。

「え、私?」

「…お前、空気読めよ…」

「空気?」

「………こういうこと」

そう言うと、ゲンマはシズネの肩をそっと引き寄せ軽く口づけをした。

「…………」

「まったく、幼い彼女を持つと大変だな」

「…2つしか変わらないのに大人ぶって」

「謝罪と仲直りの意味を込めて」

「…うん」


そしてもう一度目が合うと、今度はシズネから口づけをする。


「じゃあそろそろ帰るか!あんまり遅かったら五代目に怒られるしな」

「カカシ先輩や紅に感謝しないとね!」





数日後ー


「…丈、やっぱり少し長くしてみるわ」

「少し?」

「…はいはい、いつもの長さに戻します」

「それでよし!」

「でも何で短いのがイヤなの?」

「おま…結局何も分かってないんだな」

「え…」


ゲンマはシズネの耳元でそっと呟く。


“他の男に見られるのが嫌なんだよ”と。


「…////」


反対していた意味がようやく分かったシズネでした。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回はゲンシズ初の喧嘩しちゃったバージョン。
この2人は喧嘩はあまりしなさそうですが、
ちょっとしたことで喧嘩になった…ってのを書いてみたかったんです。
結果、ホントちょっとしたことになっちゃいましたが(苦笑)
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