自来也様に綱手様を託した後のことだったー。

ナルトくんに綱手様に対する誤解を解いてもらおうと部屋に行ったが、
まともに話もできず、修行に行くと逃げられてしまって…。


(私は結局、何もできなかった…。
 綱手様の側にいながら一体何をしてきたのだろうか?)


1人になりたかったので、宿から少し離れた居酒屋に入った。
普段は飲まないが、つい酒に手が伸びる。
そして時々深いため息をつき、先ほどの大蛇丸との出来事を思い返す。


そんな時ー


「…これはこれは……まさかこんな所でお会いするとは」


少し癖のある話し方にシズネは瞬時に反応した。


(この声はーっさっきの!!)


「……お前ぇ!!」


目の前に現れたのは薬師カブト。
シズネと同じ医療忍者で大蛇丸の付き人だ。

クナイを構え、椅子を蹴るように立ち上がる。
音や声に驚いた他の客がこっちを見ているのが分かる。

それでもシズネはお構いなしにクナイで攻撃の態勢を取るが
カブトは全く動じず、武器を構える様子はなくー


「…やだなぁ…誰も今、戦闘しに来たわけじゃないですよ。
 偶然立ち寄った先にアナタがいただけ…それに今はボクだけですから」

そうは言っても先程あんなことがあったのだから
いくら居酒屋とはいえクナイを構えるのは忍として当然である。

しかし、シズネは酔いが回ってきたこともあり
とりあえずクナイを持ったままだ元の椅子に腰かけた。

「…相当飲んでますね…」

「うるさい!お前には関係ない。あっちへ行けっ!」

その時だった。あっちへと指を指そうとした時ー
持っていたクナイが手から擦り抜ける。

思わず手から離れたクナイを見てシズネの酔いが一瞬で覚めた。
そのクナイが隣に座ってこっちを見ていたカブトの目に当たったからだ。

「…っ」

瞼の上にクナイが当たり、思わずカブトも顔を歪める。
カブトほどの忍なら避けようと思えば避けられたはずなのに…。

「…お、お前……何で…何で避けないんだ!?」

「…っ今は休戦って言ったでしょ?」

「…っ!!」

瞼から滴る血を見て、慌てて止血をする。
医療忍者のシズネならではの早い止血法だ。

「…ありがとうございます」

血が止まり、笑顔でお礼を伝えるカブト。
先ほど大蛇丸と一緒にいた人物とは思えない表情だった。

その姿を見て、思わずシズネも微笑み返す。


(何でー)


「すみませんでした」

「いえ。このくらい平気ですから」

「でも…」

「…優しいですね。好きになってしまいそうなくらい……」


(何でー)


「そんなこと言っても何も出ないわよ」

「冗談だと思ってるでしょ?」

「ええ、もちろん」


(何でーあんなにも敵対していたのに…)


「…お詫びに一杯奢ります」

「ありがとうございます」


(何でー好きだと思ってしまったんだろう)


「だけど良いんですか?ボクはあなたの敵ですよ?」

「……今は、違うんでしょ?」

「もちろん」


相手がどこまで本気なのかは分からないが、
気が付けばシズネ自身がカブトに好意を抱いてしまったのだ。

結局この日は深夜遅くまで一緒に過ごした。
そして話せば話すほど惹かれてしまうのだった。


そして店が閉まると同時に
2人は店を出て短冊街の入り口へと向かう。


「…あの門を越えるとお互い敵同士です」

「わかっています」

「お互い主人を持つ身、内緒ですよ」

「…はい」


門まであと一歩、あと一歩と近づく度に胸が高鳴る。
このまま時間が止まればいいーどれほど願ったか。


「……ではボクはあちらから帰りますので。失礼します」

そう言うとカブトは門を越え、
あっと言う間に見えなくなってしまった。

追い掛けて捕まえたい。抱き締めたい。もう一度逢いたい。
何で好きになってしまったんだろう…。
何で出会ってしまったんだろう…。

後悔と空しさだけが残り、シズネはゆっくりと宿へ向かう。
会ったばかりだとか、敵なのに…とかそんなのどうでも良かった。
こんなにも人を好きになったことはなかった。



宿に戻り、そのまま布団の上で横になる。
幸い綱手はまだ帰ってきていなかった。

次に目を覚ますと、あの人は敵。
綱手様を利用しようとしている悪いやつになる。
そして私はその人と戦わなければならない。

目を閉じ貴方を思い浮かべる。
そう、これは夢……最初から夢だったんだ。

目を覚ませば夢から目覚める。必死でシズネは自分に言い聞かせる。


そう、これは夢。現実とは違う。


だからせめて…


せめて今夜だけはー貴方を好きでいさせて下さい。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
世にも奇妙なカブト×シズネでした。これこそもう二度と書かない(笑)
なんでこれを書いたのか思い出せないくらい昔に書いた作品でした。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。