「はい、口開けて?」
「…自分で食えるってのに…」
「いいからいいから!ほーら」
「……」
ゲンマは布団から少し身体を起こし、渋々口を開ける。
まだ頭が重い。
昨日からの熱がまだ続いているのか…。
「待て…もしかしてお前の手作りか?」
「嫌そうな顔してヒドイわね。大丈夫!これは綱手様の手作りよ」
「さすが五代目。お前が作るって聞いて作ってくれたんだろ」
「い、いいから早く口開けてよ」
「図星か」
「もう…せっかく心配して来たのに、意外と元気じゃない」
「冗談だって。来てくれてありがとな」
頬を膨らませ怒るシズネを見て、少し気分が楽になった。
不思議だな、昨日は食欲なんてこれっぽっちもなかったのに。
「ごちそうさま」
「はい、そしてこれが私の手作りの薬よ。一気に飲んでね」
「……う………にげぇ…」
「薬なんだから当たり前。良薬は口に苦しって言うじゃない」
確かに思った以上に苦い。だが、料理の腕は置いといても
薬を調合する腕は長く医療に携わってきただけあり信頼できる。
だけど……
「さて、思ったより元気だし、私そろそろ戻るわ」
「あ、おい」
「ん?」
「…いや、何でもねぇよ」
引き止めようとした手を引っ込める。
あんまり心配掛けたくないしな…と自分に言い聞かせ我慢する。
「…?とにかく、何かあったらすぐに連絡してね」
そう言うと、シズネは帰って行った。
そういや、書類整理がどうとか言ってたっけか。
パタン…
静かな部屋に扉の閉まる音が響く。
くそ…あいつが帰った途端、またぶり返してきたみたいだ。
それにさっき飲んだ薬の苦味がまだ残ってやがる。…気持ち悪ぃ。
オレにとって一番の良薬は薬じゃなく、ただお前のー
シズネはゲンマの部屋から戻ると再び職務についた。
少しでも放っておくと山積みになってしまう報告書の整理や
確認をしていると、そこへ血相を変えたイワシが走って来る。
「シズネさん!!やっと見つけましたよ!」
「そんな慌てて…どうしたの?」
「さっきオレ、ゲンマさんの所行ってきたんですけど、
シズネさん行った方が良いんじゃないですか?」
「私もさっき行ってきたわよ?思ったより元気そうだったし」
「いや、今見てきたらすごく苦しそうでしたよ…。
うなされながらシズネさんの名前を呼んでたんでオレ…」
(ゲンマ…!!!)
知らせてくれたイワシにお礼を伝えたかも覚えていないくらい
シズネはすぐに火影部屋を飛び出した。
ゲンマの家へと向かう道中、頭の中で後悔の渦がまく。
さっき帰ろうとした私をゲンマは止めようとした。
あの時すでに辛かったんだわ…!!
なのに私は見た目で元気そうなんて判断して…
医者としても恋人としても失格じゃない…!
家に行くと、先ほどまで元気に見えたゲンマが酷い熱を出していた。
熱を測ると41度。急いで氷水にタオルを浸し額に乗せる。
「…シズネ……か?」
「っゲンマ!」
「…悪ぃな。何かお前が帰った途端急に…」
「違う!私のせいよ…。気づいてあげられなくて…ごめんなさい」
「……それより忙しいのに…」
「そんな…!!これからは辛い時いつでも話して。
私…あなたのためならいつでも駆けつけるし、何でもする!だから…」
今にも泣きだしそうなシズネを見て、ゲンマは“わかったよ”と手を握る。
薬が効き始めたのか、そのまま眠りに落ちる。
翌日ー
綱手に許可をもらい、シズネは一晩看病についた。
朝になり体温を測ると平熱に戻っており、顔色も随分良くなっていた。
「よかった…」
「ありがとな。もうオレは大丈夫だから。…さてと」
「出かけちゃダメよ!」
「もう見ての通り元気だからいいだろ?」
「油断大敵!今、油断するとまたぶり返すわよ!
とにかく、担当医の指示はちゃんと従ってもらわないとね!」
「…ったく……わかったよ」
「ゲンマはそうやって、いつもカッコつけようとするんだから…」
「それが男ってモンだろ?」
「たまには甘えてくれないと。
だから今日はもう1日大事を取ってゆっくり休んでね。
…あ、何かして欲しいこととかある?」
そう言って顔を覗き込むシズネを見ると、
ゲンマはそのまま肩を引き寄せ口づけをー
「ダメ!」
ーしようとしたが、あっさりシズネの手によって遮られた。
「何でもするって言わなかったか?」
「もう…病人だと思って心配してるのに。
あなたが元気になるまでお預けよ。悔しかったら早く治すことね!」
そう言い、シズネは帰る準備をする。
その後姿を見てゲンマがポツリと呟くー
「…良薬は口に苦し……か」
「…ん?」
「…何でもねぇよ。気をつけてな」
「ゲンマこそ安静にね!」
そして再びシズネが帰って行き、また静かな空間に戻っていく。
シズネを見送ると、ゲンマはシズネが置いていった薬を飲み干し
ソファに寝転ぶ。空き瓶を光にかざして、心で呟くー
オレにとっての良薬は、手作りの薬でもなく、手料理でもなく…
お前が側にいてくれること、ただそれだけー。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
このネタは家で雑炊作っている時に思いついたネタでした(笑)
良薬は口に苦し…ゲンマにとっての良薬はシズネなんです。
シズネさんが側に居てくれれば元気になる…てな話でしたが、
そのくらいシズネには太陽のような明るい魅力がありますよね♪
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