任務終了後、シズネは紅と一緒に近くの商店街へ向かう。
お互い独り身だった頃は、任務終了後には居酒屋で一杯
…というのがお決まりだったが、それぞれが結婚をした今は
商店街での買い物が日々のルーティンになっていた。
「白菜に、豆腐に、あ、あとネギね」
紅はあらかじめ買うものを書いてきたメモを見ながら
淡々とかごに材料を入れ、その隣では調理済みのコロッケなど
惣菜を次々カゴに入れていくシズネ。紅のカゴを見て驚く。
「もしかして毎日作ってるの!?」
「そうね、結婚してからは作ってるわよ」
「毎日?」
「そうだけど…?」
シズネは自分がカゴに入れたものと比較して肩を落とす。
「…私も料理くらいした方がいいのかな?」
「ゲンマは手料理が食べたいとか言わないの?」
「聞いたことないな…。アスマは?」
「手料理の方がいい、とは言わないけど喜ぶわね。
私としても健康管理くらいしてあげたいって思うから作ってるわ」
「…そ、そうよね…」
紅の話を聞き、シズネは今日は手作りをすると宣言する。
「よし、まだ時間あるし早く帰って作ってみよ」
「きっとゲンマも喜ぶわ」
「…だと良いけど」
そして材料を購入すると、シズネは急ぎ足で家へと向かった。
その途中、こっそり本屋に立ち寄り「はじめての料理」というような
題名の本を購入して帰ったのは秘密の話。
家に帰ったシズネはさっそく本を読みながら料理を作り始めた。
幼い頃から忍として修業を積み、物心がついてからは綱手の付き人として
長年旅をしてきたので、料理や裁縫はしたことがなかった。
材料と格闘し2時間が経った頃、何も知らないゲンマが帰ってきた。
部屋に入るなり、異臭と煙を察したようで、慌ててシズネを探す。
「お、おい……何だこのニオイ!?」
「………」
「ゴホッ…ゴホッゴホッ……大丈夫かシズネ!!何があった!?」
袖で鼻と口を押え、煙をかき分け進むと、台所でシズネを見つけた。
すぐに駆け寄ったゲンマだが、当の本人は慌てる様子もなく、
落ち着いてコンロの前に立ち煙の立つ“何か”を眺めていた。
「おい…ゴホッ……これ一体どうしたんだ?」
「今日ね、料理を作ってみようと思って試してみたんだけど、
なかなか難しくって…。この本の通りにしたつもりだなんだけど…」
「料理?」
コンロを覗くと、鍋に入った元の材料が分からない何かと
こんがりの域を超えて真っ黒になった魚がグリルで発見された。
「お前……料理作ったことないだろ?」
「………実は…」
「……ったく、無理なことするからこんなことに」
「紅がね、毎日手料理作ってるって聞いて…私もしてみようかと…」
「料理はなぁ…思いつきでするモンじゃないだろ。ほら手見せてみろ」
「え…」
「医療忍者にとって手は何より大切だろ?
だからオレはお前に料理作ってくれとは言わないんだ。
こんな風に手に怪我でもされた方が心配だからな」
「そうだったのね…ありがとう。でも手は大丈夫よ。
切ったのは片方だけだったからすぐに治療できたし、
…でも料理にチャクラが必要だったなんて…ビックリよ」
「いや、それはお前だけだから」
そう突っ込まれ恥ずかしくも情けなくもなり、笑顔でごまかす。
そんなシズネを見てゲンマもつられて笑うのだった。
そして軽く片付けを済ませると、
先ほどまで煙たかった部屋も随分とマシになってきた。
「よし、とりあえずはこんなモンだろ。
今からだと何もできねぇし、何か食いに行くだろ?」
「…うん、そうね!さすがにコンロは治療できないし…。
でも…たまには手料理とか食べたいって思わないの?」
「手料理?そうだな…食べたいけど、今のお前のはいらねぇよ。
もう少し勉強してからだったら食べたいけどな!」
「あひぃー…努力します」
「とにかくあんまり気を遣うな。お前はお前のままでいいんだからな」
「ありがとう///」
「じゃあ今から出かけるか!アスマ達より良いモン食いに行くぞ」
「ふふっそうね!」
こうして2人は外へ出かけて行き、久々に外食を楽しんだ。
次の日から、シズネのルーティンが新たに追加される。
任務終了後は紅の家に行き、料理を習う…という習慣ができたのだった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
結婚設定のゲンシズ。普段あまり原作から逸脱した設定では
書かないのですが、なんとなく結婚後の設定で書いてみました。
シズネの料理下手説。当時ゲンシズ好きの同士さんと
料理できなさそうだと可愛いなぁというお話をしていましたが、
今でもシズネは料理が下手だったらなぁって妄想中。
というか、ゲンマの方が得意そうなイメージが先行して…
完全にゲンマ=平田さん=サンジのイメージなのかもしれませんが(笑)
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