その日、朝から天気は…曇りだったー。
「今日は朝から嫌な天気ですねー」
「ああ、こうも天気が曇っているとどうも気が滅入る。
こういう時はパーッとパチンコにでも行きたいものだね!」
「つ、綱手様!」
「冗談冗談♪」
「………ホント嫌な天気」
シズネは火影部屋から窓の外を眺めポツリと呟いた。
森のざわめく音、湿り気をもった風、何だか急に不安になる。
それに…
シズネは千切れてしまったお守りを握り締めた。
(ゲンマ……)
私はあの事件以来、度々こうしてどうしようもない不安に駆られる。
そう、ゲンマたちが音忍に襲撃されたあの事件。
今日の天気はあの日と似ていた。
「おいシズネ!ほらこれをー…シズネ?」
「…!!あ、はい、スミマセン」
職務をこなしていても不安は消し去れない。
空は昼になっても夜になっても曇りがかったままだった。
「…まだ晴れませんね」
「ああそうだな。今日1日ずっとこんな天気じゃないのか」
「………」
「どうかしたのか?」
「いえ………あ、そう言えばゲンマ班って今日の任務なんでした?」
「ゲンマ班?…えーっと…これだ、茶の国への機密文書の受け渡しだ」
「茶の国…」
「あそこは今治安が悪いからな、無事に終わればいいんだが…」
綱手のその言葉も気になり、
シズネは仕事を終えると急ぎ足で家へと向かう。
まだ明かりが点いていないことを確認すると、部屋へと急ぐ。
いつもなら扉を開けると中から「おかえり」の声がする。
だが今日は……しない。
まだ帰っていないのか、それともー
部屋に入るとベッドに横たわる黒い影が見えて表情が凍りつく。
一瞬にしてそれがゲンマだと分かったからだ。
「ゲンマッ!!」
朝からの天気や切れたお守り、綱手の言葉、
全てが不安の波となり一気に押し寄せる。
ベッドに倒れかかっているゲンマを起こし必死に名前を呼び続けるー
「ゲンマ!!」
もう一度名前を呼ぶとゲンマの意識が戻った。
ーいや、正確には目を覚ました。
「…んだよ、大声だして」
「……!」
ゲンマの声を聞き、シズネはその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
何かあったかと勘違いしてしまったことや
一気に不安が消し去られた喜びとか、そんなことはどうでもよかった。
大切な人が生きている。忍の世界ではそれだけで安心できる。
「シズネ…?」
安心して涙ぐむシズネを見てゲンマは不思議そうに見つめる。
そんなシズネの手には以前ゲンマが渡したお守りが。
そのお守りの紐が切れているのを見て、勘のいいゲンマは納得した。
「お前…もしかして」
「……良かった…」
その言葉を発するだけで精一杯だった。
ゲンマは肩を震わせ、お守りを握りしめるシズネを力強く抱き締めた。
「…大丈夫だ。安心しろ、オレはここにいる。そしてこれからもな」
「…ゲンマ…」
「音忍と戦ったあの時、オレは死にかけた。
だがお前が現れて助けてくれた。この心臓をな」
ゲンマはシズネの手を取ると、自分の心臓に当てて心音を伝えるー
「…な、生きてるだろ。オレを生かしてくれてるのはお前なんだ。
だからオレが死ぬ時はお前が死ぬ時だ」
「そんなこと…」
「ったく、そんな切れたお守りなんか信用すんなよ。
まぁジンクスとかそういったもんを信じやすいお前に
こんなものを渡したのが間違いだったな。
ほら…それと交換にお前にはこっちを持っていて欲しい。
いつか渡そうと思ってたし…ま、こんなタイミングだけどいいよな」
そう言うとゲンマはそっとシズネの左手を持ち
その薬指に指輪をはめた。
「……これって…」
「これなら切れたりしねぇから安心できるだろ?」
「…っじゃなくてこれって」
「…まぁ婚約指輪ってとこだな。ついでに魔よけ害虫避けの効果もあり」
「…ふふっ何よそれ」
「…いいからこっちに来いって」
「え……」
「お前の不安なんか一気に掻き消してやるから」
そして再びシズネを力一杯抱き締めた。
不安を消し去るかのように…
そんな2人を窓から眺める空は
今朝の曇りがかった空ではなくー
明日の快晴を予言するかのようなキレイな空だった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ちょっと暗め始まりのゲンシズ。このネタは音忍との戦いを見て、
いつか絶対使おうと考えていたものでした。
あれを見て、ゲンシズが大好きになった深い思い入れがあったので。
ゲンマは原作では発言少なめなので、アニメイメージで書いていますが
CV平田さんのおかげで脳内変換で萌えさせていただいています(笑)
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