「ん~~」

朋香は1枚の紙を見つめながら喉を唸らせた。
その手には携帯電話。どうやら電話をかけるか迷っているようだ。

1枚のメモには『丸井ブン太』という名前と
携帯番号、メールアドレスが書かれてある。

先日、関東大会で出会い、教えてもらった連絡先だ。

「もう…渡してくるなら連絡してよ」

と、ぼやく朋香だが、実際はブン太から連絡することは不可能だった。
朋香は名乗ったものの、連絡先は一方的に貰っただけだったからだ。

(連絡するにしても何て連絡したらいいのかな…)

連絡をするか否か葛藤している朋香だったが
そこへ、朋香の母がチラシを持ってやってくる。

「ねぇ朋香、これ駅前のケーキ屋さんの割引券があったけど
 桜乃ちゃんと行って来たら?」

「駅前のケーキ屋さん?へぇーリニューアルオープンするんだ」

「そうなの。このチラシを見せると、ケーキセットが半額って」

「ケーキセット半額ねぇ…………っあ!お母さんありがとう!」


そう言うと朋香は携帯を手に取り電話をかけた。


繋がるまでのコール音が朋香の胸の鼓動を高まらせる。


「もしもしー」

「あの~この間、試合会場で会った小坂田ですが…覚えてますか?」

「当ったり前じゃん!かけてくれたんだ、サンキュ」

あの時と同じこのカラッとした明るい声が聞けて笑顔になる。

先ほどまでは電話をするかあんなに迷っていた朋香だったが
もっと早くにかければ良かったと後悔するほどだった。

「…あ、それで、あの~この間のお礼というか、
 駅前の喫茶店が新装オープンして…それでケーキセットが半額でー」

「え~マジマジ?んじゃ行こ行こ~!!」

誘う間もなく、結局ブン太から誘ってくれた形になった。

待ち合わせ場所と時間の約束をして、
電話を切ると緊張が一気に解けて顔が緩む。





待ち合わせは土曜の16:00。
服選びに時間がかかったものの5分前に到着をし、ブン太を待つ。

5分、10分………

少し不安になってきた頃、ようやくブン太が到着した。

「ごめんな!副部長のミーティングが長引いてさぁ~」

「大丈夫ですよ!あ、それより丸井さん、この間は色々と…」

「ちょい待ち!その“丸井さん”ってやめろよ。
 俺そういうのダメなんだよ。ブン太でいいって!」

「え…だって年上…」

「んじゃ何だったら良いんだ?」

「そ、そう言われても……。じゃあブン太…先輩とか?」

「うーん……ま、お前が納得すんならそれでいいけどさ…。
 な、何か普段あんま呼ばれてねぇからムズがゆいけどな//」

「ふふっじゃあブン太先輩、行きましょ?」

「あ、ああ//」


普段呼ばれてないからムズがゆいと言っていたブン太も、
朋香にそう呼ばれると少し顔を赤くした。

そして朋香とブン太、2人肩を並べて歩く。
その姿は傍から見ればどうみても恋人同士に見えた。




喫茶店に着くと、もちろん2人はケーキセットを注文。
出会った日はプリンで揉めた2人だったが、
ケーキはどれも2つ以上残っていたので取り合いをせずに済んだ。

「ん~~美味しい!」

「こっちのも旨いぞ~」

「えぇ~そっちと悩んだんだけどなぁ…」

「……ほら…ひと口やるよ」

出会った時と同じのように朋香の口にケーキを運ぶ。

「ん~ホントだ、こっちも美味しい!」

「って口の横にクリーム付いてんぞ」

そう言って朋香の口元についたクリームをブン太が指でふき取り、
そして当たり前のようにそのクリームを舐めてしまった。

「んま~v」

「っちょっ…////」

「え?……っあ…いや、これは…その…////」

いつものクセだと説明するも、お互いに赤面してしまう。



そして帰り道ー
カップルばかりとすれ違うので、さらに気まずくなる2人。

何となくお互いの気持ちに気付きながらも一歩が踏み出せない様子で。
その気まずさを払うために、ブン太が先に切り出した。

「……お、お前さ…あの………俺のこと…」

「は、はい…」

「……っあー!俺こうゆうのもダメなんだよ!つまりー、そのー……」

「ブン太先輩……」

「…お、お前…俺とこうして会うの嫌じゃないか?」

「当たり前です!じゃなきゃ来ないし、誘いませんよ!」

「じゃ、じゃあ付き合え!…っじゃなくて!
 …俺とそ、その……付き合わねぇか?」

「……先輩それって……」

「…ったくお前って意地悪だな。そんくらい分かってんだろ?」

「……はい//でも言って欲しいって言ったら怒ります?」

「…怒んねぇよ//でもあれだ、目瞑ってくれ。見られると言いづらい」

「…はい」

そして言われるがまま目を閉じた朋香にブン太は
そっと近づくとその頬に口付けをする。

「っ先輩!!言ってることとやってることが違います!!
 こっちにも心の準備ってものが////」

「//だってやっぱ恥かしいって。
 でもまぁ…その内言ってやるから……な!」

「も~~~」


こうして2人は互いの気持ちを確認して付き合うことになった。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
これは完全に当時はまっていた学プリの影響ですね(笑)
前作「恋のつぼみ」からの2部構成になっています。
明るいもの同士、朋ちゃんとブン太お似合いで推しCPでした♪
2人とも敬語が似合わないから今度はもっと仲良しの
恋人同士の状態で書いてみたいものです。
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