朋香は学校を終えると
家からも学校からも少し離れた公園へ向かう。
住宅街の真ん中にある小さな公園。
1人になりたくて来てみたが正解だった。
幸い公園には誰もいなかったので
朋香はブランコに座り、悩みの要因を考える。
(二度と侑士や跡部と話すな…か)
岳人と付き合って3ヵ月が経過した。
嫉妬心の強い岳人のことを最初は嬉しいとも感じていたが
氷帝の他のメンバーの応援はダメ、青学の応援もダメ、
自分以外の男と話すな…などなど、数々のルールが増え続けている。
そしてついこの間、少し挨拶程度の会話をしただけでそう怒られた。
そんな嫉妬深い岳人に朋香は苛立ち、ここ数日はデートの約束は断り
今後についてここで考えることが日課のようになってしまっていた。
(別れたいんだか、別れたくないんだか…)
投げやりな態度でブランコを漕ぐ。
そんな朋香の前に遠くから向かってくる人がいた。
目立つ髪色、小柄な背丈。見覚えのある容姿に朋香は絶句する。
「…岳人先輩…なんでここが!」
「何してんだよこんな所で。今日は調子が悪いから帰るって…」
「…っ…そうなの、調子が悪いからここで休憩してるの!」
もちろん口から出まかせだったが、
デートをキャンセルしている以上、作り話で事を進める。
いつもなら、この地点で怒って問い詰めてくるはずだが、
今の岳人にはそんな余裕もなく、深い溜息をつくと、
朋香の隣のブランコに腰掛ける。
「…えーっと…この間はその…」
「…………」
「だから…その…」
「…………」
「何だよ!?そっちが無視すんならこっちだってなぁ!」
元々気の短い岳人はすぐに返ってこない朋香の反応に苛立ち、
つい怒りの言葉をぶつけてしまう。
そんな岳人の反応に、朋香の何かが切れてしまった。
「…いい加減にして!!」
「と、朋香!?」
「先輩っていつも自分のことばかり…。
勝手なルールばかり作って、私のこと信用しないし、
先輩のこと大好きだったのに…もう分からない!」
そう言って、怒りを言葉でぶつけると
朋香は小走りで公園の外へと出て行ってしまった。
振り向く様子もなく走っていく朋香を見て
段々と焦りと後悔の波が押し寄せる。
そして追いかけようとする岳人の目に映ったのは
朋香の肩が震えている姿だった。
岳人は急いで公園を出ようとする朋香を追った。
その時ー
見覚えのある車が公園前でピタリと止まる。
息を呑む岳人。
予感的中、車から出てきたのは跡部景吾だった。
岳人は朋香を追う足を止め、2人を見つめる。
「…跡部さん…」
「泣いている女を見て放っておくのは男として最低だからな。
ほらハンカチだ。使え」
「…ありがとうございます」
それだけ言うと、跡部はその場を去って行った。
残された朋香はハンカチを握り締める。
その姿を岳人は見てー
「っちくしょー!!」
近くの木を殴り大声で叫ぶ。
その声を聞いて、朋香は岳人の方を振り返った。
大声で叫ぶ岳人の表情は言葉とは裏腹に、
怒りではなく哀しさに溢れていた。
先程までは怒っていた朋香だったが
こんな弱っている彼氏を放っておくほど冷たくはない。
「…岳人…先輩」
朋香は岳人に近づくと、木を殴ったことで
擦りむいてしまった手をそっと覆うように
咄嗟に先ほど跡部に渡されたハンカチを渡す。
岳人は目を見開き、ハンカチを受け取るとそのまま地面に叩きつけた。
「くそっ!!」
「ちょっと何するのよ!」
「ちくしょー!!いつもそうだ。アイツはいつも…」
「やめて!!」
「アイツはいつも俺の好きなやつを奪っていく。いつも…」
岳人はその場に泣き崩れる。そんな岳人を見ていると
朋香は何もかもがどうでも良くなってきてしまった。
(いくら束縛されたって、こうして戻ってくるなんて…
私はまだ岳人先輩が好きなんだ)
自分の気持ちに答えが出ると、
朋香は岳人にそっと寄り添うとぎゅっと抱き締める。
「…先輩…さっきはごめんなさい」
「朋ちゃん…お、俺こそ本当にー」
「いいの。先輩がこんな風になっちゃうくらい
私のこと想ってくれてるって伝わったよ。
それに、さっきはあんなこと言っちゃったけど
こうして戻って来ちゃうくらい私も先輩が大好きなんです」
「ホントにごめん!俺、朋ちゃんを信じてなかった訳じゃないんだ。
ただいつもアイツは俺の上を行く。もちろんテニスでは尊敬してるし、
仲間だと思ってる。だけど…アイツはいつも…」
「…もういいんです。私は離れません。先輩の側にずっといます」
「…こんな俺でも良いのか?」
「仕方ないもん」
「何だよそれ!?」
「最初から負けず嫌いで独占欲が強いこと知っていたしね。
だけどー、少しずつでいいからルールはなくしていきましょ」
「…あぁ…俺も努力する。ありがとな」
こうして元の鞘に収まり、これを期に数々のルールも減り、
今では束縛も少なくなった。
そして今日はさっそく氷帝へ練習試合の応援に来ている。
「岳人先輩~!!ファイト~!!」
「…仲直りできたみたいやな」
「あ、忍足先輩」
「あのブランコ錆びてるから乗る時、注意しぃや」
「はい?…もしかして…あの場所にいたこと岳人先輩に…」
「いや、俺はそんなにお節介やないからな。
まぁ無事仲直りできてよかったわ!岳人の機嫌もいいしな」
「ありがとうございます」
そうやって仲良く話す2人に岳人の声がコート内に響き渡る。
「侑士ー!俺のだかんなー!!」
「ああ、わかってる!お前が趣味の女の子なんて願い下げや」
「…ひどっ!!」
「こんくらい言うとかな、あのお子ちゃまは煩いからなぁ…。
やれやれ…まぁ疲れるかも知れへんけどよろしくな」
「…はい!」
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
岳人×朋香の嫉妬ネタパート2でした♪
岳人=嫉妬しぃのイメージが拭えませんが、やりすぎですね( ;∀;)
岳人がひたすら束縛してる嫌なヤツになっています(苦笑)
私だったら絶対イヤだ、こんな独占欲強い人( *´艸`)
代わりに?忍足や跡部が良い人に見えますよね。
決して岳人をディスっている訳ではないですが、
どうしても私の中での岳人イメージがこれなんです(笑)
スポンサードリンク