「…香…朋香」
乾は軽く揺すって机に伏せて寝ていた朋香を起こす。
「ん…先輩?私…寝てたの?」
「ああ。朋香は不思議なぐらい寝るの早いな。
俺が飲み物を持って階段から昇ってくる、
たった15.76秒の間にどうやったら寝れるんだ?」
そう言い持ってきた缶ジュースを朋香の額に近づけた。
「冷たっ!一気に眠気飛んでいきましたよ」
「それはよかった」
私と乾先輩が付き合って、もうすぐ2年になる。
先輩が高校生になってからは会う機会が前より少なくなった。
だけど部活が休みの日は、こうして先輩の家に呼んでもらっている。
外ではあまり自分を出さない先輩も家ならリラックスしているし、
私自身この空間がとても落ち着いていて大好きなのだ。
「あ、そう言えばもうすぐ付き合って2年だね」
「正確にはあと1週間と2日だな」
「相変わらず細かーい。でも何だか懐かしいなぁ。
先輩が好きで、ただ見ているしかできなかった頃が…」
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私は入学して早々、今ではそれも懐かしいけれど、
桜乃と一緒にリョーマ君を見るためにテニスコートへ
通うことが日課となっていた。
最初はリョーマ君を応援してるだけだったけど、
次第にテニスというスポーツそのものに魅力を感じるようになった。
それからは、リョーマ君に関わらず青学テニス部の
みんなを応援するようになり、先輩ともよく話すようになった。
今でも覚えている、初めて先輩を意識した時のこと。
その日、私はコート付近の手洗い場に忘れ物をして
それを取りに行った時、手洗い場で顔を洗っていたのが先輩だった。
もちろん乾先輩のことは知っていたけど
軽くテニスを見てる時に話す程度だったので、2人きりは初めて。
緊張しつつも顔を見ると明らかにいつもと何かが違う。
そう、いつもかけている眼鏡がなかったのだ。
初めて見た先輩の目は想像してたよりも優しく穏やかで
ドキっとさせられるようなしっかりとした目だった。
あまりのギャップとそのカッコ良さに一目惚れに近い恋をしてしまった。
「乾…先輩…?」
「あぁそうだが…」
不思議そうに見つめる朋香を見て、何かおかしいのかと
しきりに服や髪に触れ、何か変なところがないかを確認する。
そしてその“何か”に気づくと、慌てて眼鏡を取り、いつもの姿に戻る。
その挙動不審な動きを見ていた朋香は思わず声をあげて笑った。
「アハハ…先輩慌てすぎですよー!」
「お、おい今見たことは誰にも…」
「え?どうしてですか?先輩カッコイイのに」
「そんなことを言われたのは初めてだな//」
「それに先輩おもしろいし!
これからも、もっともっと喋りかけてもいいですか?」
「もちろん歓迎するよ。なんならこれからどこか行くか?
ちょうど部活も終わったところだからな」
そして、その足で近くのファミリーレストランへ行き、
部活の話や学校の話など他愛もない話で盛り上がった。
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「懐かしいな…。あのあと暫くして私から告白したんだよね!」
「ああ。そうだったな」
「ねぇ前から気になってたんだけど、
先輩はいつから私のこと好きになってくれたの?」
「そ、それは…///秘密だ」
「ひどーい!!私はあの手洗い場事件の日だよ。
初めて先輩の目を見た日。
…ねぇ先輩?眼鏡も個性的でいいけどさ、たまには外してみない?
先輩かっこいいのに…。あっそうだ!私といる時だけ外すとか!?」
「何で2人の時限定?」
「だって私と先輩だけの秘密って感じで良くないですか♪
それに…先輩カッコイイから他の人に取られたくないし」
そう言って口を尖らす朋香に乾は少し笑いながら眼鏡を外した。
「俺が朋香を好きになったのは出会ってすぐかも知れない。
越前を応援している姿が妙に印象的で、
でも付き合いたいと思うようになったのは、俺もあの時だな。
不思議そうに俺を見つめる朋香の目に吸い込まれたというか…
表情豊かで、あの短時間だが一緒にいてすごい楽しかったし…」
「そうだったんだ!じゃあ私たちお互い目に惹かれた仲だね!」
「だな。まぁ俺は目はもちろんだが全て含めて朋香が好きだけどな//」
「先輩…//」
「じゃあお互い好きになった日と同じく、どこか行こうか!」
「賛成!…となったら行き先はもちろん」
「あの日行った所だな」
「先輩がスープスパを食べる確率80%!」
「いや100%だな」
こうして乾と朋香の2年目は幕を開けた。
出逢った頃のように、同じ場所で、同じ2人で…。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
何度もアレンジを繰り返している「乾×朋香」。
当初のネタは忘れましたが、原作で乾の目が公開されたのを
きっかけに一部訂正したのを覚えています。
目力って第一印象ですよね。乾の目が公開された時は
つんちょさんの声のイメージのままでした♪
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