「「青学ファイオーッ!!」」


「「先輩がんばれ~ッ!!」」


今日は青学と聖ルドルフの練習試合。
朋香はいつものように桜乃と一緒に応援に来ていた。


練習試合も終盤に差し掛かっており、
試合が終わったコートからコート整備の準備も始まっている。


そして、最後の試合が終わり、
朋香たちも帰る準備をしていた時、
試合を見に来ていた他校の男子生徒が2人に近づいてきた。


「ねぇ君たち何してるの?もう帰るんでしょ?
 俺らと遊ばない?俺たちもちょうど暇しちゃっててさぁ」

「私たちは忙しいの!」

朋香は片付けの手を止めずに
持ってきたものをカバンに入れると男たちを睨みつける。

その勝気な様子に男たちは一瞬諦めた様子だったが、
今度はその横で不安そうに見つめる桜乃の方へ近づいた。

「じゃあ三つ編みの彼女だけでいいや。さ、行こう」

「あ、あの…その……」

「ちょっと桜乃を離して!」

「へぇサクノちゃんって言うんだ。名前もかわいいじゃん」

そう言って桜乃の腕を掴み強引に連れて行こうとする。

どうやら相手は高校生のようで、力では敵わないと察した朋香は
わざと大きな声を出して、男たちを威嚇する。

「ちょっと離しなさいよ!先生呼んでくるわよ!」

「せっきからうるせぇんだよ!お前には関係ねーだろ!」

朋香の強気な態度が返って男たちの怒りに触れてしまい
1人の男が勢いよく近づいてくると、朋香に向かって平手を飛ばした。


「…!!…っ…」


そこへー


「貴方たち一体ここでなにをしているんですか!?」

「あぁ!?なんだお前!」


(…この声!…観月さん…?)

朋香は平手を受けた時に倒れて頭をぶつけてしまったようで
朦朧とする意識の中で、声とうっすら見えた顔に安心をして
そのまま倒れこんでしまった。





次に朋香が目を覚ました時、
そこはコートの外…ではなく保健室だった。

「……っ……痛っ…」

「おや、気がつきましたか?」

「観月さん…。私…そうだ!変な男に殴られて…
 それで観月さんが来てくれて……えっと…その後は……」

「気を失っていたんですよ。でも、もう大丈夫です。
 あの無礼者たちはボクが処理しましたから」

「しょ…処理ですか…」

少々物の言い方に不信さを感じながらも
観月が助けてくれたことには変わりないのでひとまずお礼を伝える。
別に通りかかっただけだからと言うが、その顔には殴られた跡が。

「…っその傷…」

「?…あぁこれですか。気にしなくていいですよ。
 あの無礼者たちをただでは済ませたくなかったのでね」

「え…?」

「不動峰の事件を真似させてもらったんです。
 つまり、ボクが手出しをしなかった事実を訴える為に
 止むを得ず一発だけ殴られておいたんですよ。
 だからあの無礼者達は警察に送り込みましたよ。
 それよりボクは貴女の顔に跡がついたことをどう詫びて良いのか…」

「何でですか?観月さんは関係ないですよ」

「いえ、ボクがもっと早く気が付いていればこんなことには…」

「そんなことないです。私がもっと上手く逃げていたら…
 あ!そう言えば桜乃は!?」

「ご友人なら竜崎先生と帰宅されましたよ。
 貴女の家にも電話を入れて下さったそうなんですが誰もいないようで…
 なので迎えが来るまでボクが付いてることにしたんです」

そう言って、朋香の赤く腫れた頬に氷水で冷やしたタオルをあてがう。


これまで観月とは試合で何度か会う程度で
話した回数も少なかったが、心配そうに介抱をしてくれる観月を見て、
朋香は胸がドキドキしているのを感じた。


「…1つ聞いていいですか?」

「ええ」

「何でそんな親切にしてくれるんですか?」

「んふっ…では、なぜ貴女はそう思うのですか?」

「そ、それは…あの……不二先輩との試合を見てたから…。
 っごめんなさい!私、勝手に冷たくてヒドイ人って思っていて…」

「…でしょうね」

「で、でも!それは私の勘違いで!
 今はすごく優しくていい人だと思ってます!」

「んー…いい人ねぇ…」

「あの…そろそろ帰らないといけないんじゃないですか?
 すみません、こんな時間までいてもらって…」

「まったく、貴女って人は鈍感ですね。
 さっきの答え、考えてみて下さい。
 そこらの他人にここまでするとお思いですか?」

「いえ…でもだから観月さんは優しいなぁって」

「違いますよ。答えはこういうこと」


そういうと観月は朋香の手の甲にキスを落とした。
驚いて目を見開く朋香に観月は顔を近づけると耳元で囁くー

“貴女が好きだからです”とー


「…え///えええ!!??」

「おやおや、やはり貴女はおもしろい人ですね。
 せっかくのムードを台無しに…」

「…でも…そんな急に…///……えぇーっ!?」

「んふっ…貴女はボクのこと“いい人”だけみたいですけど
 ボクは貴女のそういう天真爛漫なところが好きなんです」

「だ、だってそんな…」

「ごめんなさいね突然こんなことを…。
 決してを困らせているわけではありません。
 ただボクと貴女は他校同士。次いつ会えるか分からない状態で、
 この一瞬を逃したくなかったんです」

そう言うと、観月は椅子から立ち上がり服を整えると帰る準備を始めた。
戸惑いを隠せずにいた朋香だったが、このまま離れることを思うと
思わず制服の袖をつかんで止めてしまった。

「………っあの…私、知りたいです!観月さんのこと。
 本当は助けてもらった地点で好きになりそうだったから…。
 なのに観月さんから言われて混乱して…少し時間が欲しいんです」

そう言って必死に訴えかける朋香を見て
観月は頷くと、朋香の頭を撫でた。

「…やはり、貴女はボクが想像してた通りの人ですね。
 もちろんいいですよ、ボクのこと色々教えてあげましょう。
 ただし!ボクのこと知って嫌いにはならないで下さいよ。んふふふ…」

「な、なんか怖いかも…」

「冗談ですよ。ゆっくり仲良くなりましょう」



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
かなりマイナーな観月×朋香。
朋ちゃんに翻弄される観月が書きたくて書いちゃいました。
最初観月は年上キラーと思っていたんですが、学プリをしてからは
意外と年下も合うなぁと…。ジェラシー感じるタイプだったので尚更。
ちなみに観月が喋ると話が長くなるのがちょっと面倒でした(苦笑)
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