クリスマスが近づいてくると、プラントは一気にクリスマス色に染まる。

終戦して1年、アスランは初めて親も恋人もいない1人での
クリスマスを過ごす準備をするためにショッピングモールへ来ていた。

周りはみんな家族や恋人同士ばかり。
これまでにない自分の姿を想像し、思わず失笑してしまう。

ラクスと婚約していた頃は、この時期になると
クリスマスパーティーに着て行くドレスやスーツはもちろん、
ツリーやオーナメントなどを一緒に探しに出かける日々だった。

(あの頃はラクスに引っ張られて疲れた時もあったけれど…
 今は楽しかったあの頃に戻りたい気分だな…)

そんなことを思い返しながら、
アスランはクリスマス料理をテイクアウトし、車に向かう。


そこへー


「アスラン?」

「…ラクス!?」


あまりに突然で、思わず自分の目を疑う。
この広いプラントで、偶然再会するなんて…。

懐かしい声に気付き、振り返ると
変わらぬ笑顔で手を振るラクスが立っていたのだったー。





「まさか本当にアスランだとは思いませんでしたわ」

「俺もだよ」

お互い1人ということが分かると、近くにあるカフェに入った。
ラクスと向き合ってお茶を共にするのは婚約を破棄して以来のこと。

「「あ、あの!」」

話したいことがたくさんで、思わず同時に話してしまう。

昔ーまだ婚約という言葉が似合わなかった頃も
度々こうして会話が重なって慌てていたっけな…。

口元に手を当て、おかしそうに笑うラクスに俺は見惚れてしまった。

「では、アスランから先にどうぞ」

「え…あ…うん、その…キミはクリスマスを一緒に過ごす人は…?」

自分で自分を呪った。
カップルだらけの周りの雰囲気がそうさせたのか、
まだ再会してすぐだというのに、こんなこと…。

「いいえ。今年は1人でゆっくり過ごそうと思っています」

「…そ、そうか」

恋人がいないことが分かり安心したのが自分でも分かった。

親の言いなりで婚約し、婚約破棄をしたわけではあるが、
ずっと心のどこかに彼女の存在が残っていた。

キラとの友情を守りたかった俺は本心を認めずにきたが、
戦争が終わり、こうして偶然再会をし、彼女も1人だと知った今、
もう一度チャンスはあるのか…なんて自己中心的なことを考えてしまう。

「アスランは…今誰かとお付き合いされているのですか?」

「い…いや、俺も1人なんだ」

自分の心が読まれたのかとドキッとしてしまう。
ラクスのことだ、きっと相手がいたら…と気遣ってくれたのだろう。

お互い相手がいないことがわかると、
婚約していた頃のように話が弾みだす。

「さっきキミと過ごしたクリスマスを思い出していたんだ」

「あの頃は楽しかったですわ。
 一緒にドレスを見に行って、一緒にディナーを食べて…」

「…そうだ。良かったら、家来ますか?」

さすがに唐突過ぎるだろ、と言った後に後悔をしたが、
ラクスもこのカップルだらけの雰囲気が居心地が悪かったのか
“喜んで”と承諾してくれた。





家につき、ラクスのコートを預かる。
またここにラクスのコートがかかる日が来るなんて…と口元が緩んだ。

「ちょうどクリスマス料理を買いすぎたから
 来てくれてよかったよ。せっかくだし、一緒にディナーをしよう」

「ええ、ぜひご一緒しますわ」

テイクアウトではあるが、クリスマス料理を一緒に食べ、
部屋に置いてあったミニツリーの飾りつけを一緒にして、
まるで過去に戻ったような錯覚に陥ってしまう。

あまりに懐かしく、楽しくてー

時間を気にせず懐かしい話題で盛り上がり、
2人は一足早いクリスマスムードを味わった。

そして、気がつけば時計の針がイブに指しかかろうとしている頃に。

「まぁ!もうこんな時間…楽しい時間はあっという間ですわね」

「すまない…!すっかりこんな時間に…」

「では、そろそろ私ー…!」

そう言って立ち上がったラクスだったが、
お酒を飲んでたため、立ち上がった時にバランスを崩して
気付けばアスランの上に重なるように倒れてしまっていた。

「アスラン、大丈夫ですか?」

「ああ。でもそれより泊まっていった方がー」

「泊まって…?」

何気なく言った言葉に俺は焦る。
下心があるわけでも、そんなつもりでもなかったが、
ラクスに聞き返され、頭に一瞬そういう考えが過ぎった。

「っ…ただ、夜遅いからって意味であって…
 俺はそっちのソファーで寝るから気にしなくていいんだ」

自分でも戸惑い過ぎだと思った。
ラクスを意識すると、どうもリズムが狂ってしまう。


あの頃に帰りたい。
もう一度ラクスとやり直したい。


はっきりそう思えた時、アスランは無意識に
自分の上に倒れこんでいたラクスを抱き寄せるとキスをしていた。


俺はきっと、何かきっかけを待っていたのかも知れない。
再び結ばれるような何かを。


キスをして自分の想いが明らかになる。
別れてからもずっと引きずっていた想い。
一時は父親の言葉に惑わされ、ラクスを傷つけたこともあった。


だけど、大人になって、ラクスとの思い出が度々蘇るようになり、
もう一度出会えたら…と何度も思っていた。


「…アスラン…///」

「俺…その…」

何か上手い言葉を見つけようと頭を絞ったが、
ラクスを目の前にすると、はっきり言える言葉はただ一つ―

「キミとやり直したい」

アスランの真剣な言葉にラクスも頷き、言葉を返す。

「わたくしもあなたともっと早くこうしていたかった」

その言葉を聞き、アスランは再びラクスと口付けを交わす。
気付けば日付が変わってイブになっていた。

「Happy Christmas」

そして2人はイブの日に再び結ばれ、
恋人同士のクリスマスイブを味わうことができたのだった。




ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
SEED時代1番好きだったアスラクでしたが、何気に初書き(*^^*)
終戦後とか書きながら、完全に捏造しまくりでスミマセン><
カガリとキラはいずこへ?公式CPも好きなんですが、
アスラクは最初のきごちない許嫁設定から好きだったんですよねー。
アスランよりも積極的な気がする、このラクス。
大人になってからの2人ってことで少し大人っぽくしてみたものの難しい。
SEED-Dが始まり、アスメイが1番推しではあるものの、
初代の大好きなCPで書けてよかったです♪
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