ある夏の日ー。
朋香と桜乃は関東大会の応援に行く途中だった。

「今日は特に暑いねー」

「あっ桜乃!見て見て!いい所にコンビニ発見!何か買って行こうよ」

「そうだね!お昼も向こうで食べるし…朋ちゃんお昼は?」

「ついでに買うよ。いいなぁ桜乃はいつもお弁当作ってもらえて」

「おばあちゃんに作るついでだよー」

そんなことを話しながら2人はコンビニへ入って行く。



「えーっとお弁当…お弁当…っと…あとー」

「朋ちゃん見てーこの焼きプリンって…」

「あー!前に食べて美味しかったやつね!う~んどうしよっかなぁ…
 このアイスも美味しそうなのよねー」

「でもアイスだと溶けちゃうし…。このプリン人気みたいであと1個だよ」

「そうよね!じゃあプリンにー」

朋香がプリンにしようと決意し、プリンへ手を伸ばした時、
ちょうど反対側から同じプリンに向けて手が伸びてきた。

そして朋香がその手に気付き、手を止めた時、
その隙を狙うかのように、その手によってプリンが奪われていく。

唖然として立ち尽くす朋香のことを気にする様子もなく、
プリンを手に入れた男は嬉しそうにツレと会話を続ける。

「やっぱ試合の時には甘いもん食わねーとな」

「おい、もうすぐ時間だぞ」

「おう!じゃあ行こうぜ」

突然のことで朋香はただその光景を眺めるだけだったが
やがて目の前で繰り広げられた一連の流れを思い出しー

「…く、悔しいー!!あと1秒早かったらプリンは私のものだったのに!
 何よあの人!レディーファーストって知らないワケ!?
 あの赤髪、覚えてなさーい!」

「と、朋ちゃん…」

怒りに燃える朋香だったが、
そうこうしていると試合開始の時間が近づいており、
桜乃にアイスを勧められるも、怒りのスイッチが入ってしまい
“プリン以外はいらない”と言うと、慌ててお昼ごはんの
会計だけを済ませてを店を出た。





そしてー
走った甲斐あり、開会式には少し遅れたものの
最初のダブルスの試合には間に合った。

2人はコートがよく見えるところへ行くと、
第一試合の桃城と海堂のダブルスを応援する。

「桃城せんぱーい、海堂せんぱーい、ファイト~!」

フェンス越しに声を上げて応援する朋香。
先ほどの怒りがいつも以上のエネルギーとなり応援にも力が入る。

そんな朋香に桜乃は圧倒されていたが、
対戦相手を見て、慌てて朋香に声をかける。

「ね、ねぇ朋ちゃん!!見てあの人!」

桜乃に言われて対戦相手のダブルスに目を移す。
遠くからでもよく分かる髪色。
対戦相手はなんと先程プリンを買って行った赤髪の男だったのだ。

「あぁーっ!!さっきの焼きプリン~~!!!」

「と、朋ちゃん!試合中だよ!!」

「あ……//…まさか対戦校だったとはね。まぁあんなプリン野郎も
 桃城先輩や海堂先輩の手にかかれば楽勝楽勝♪」

そう信じて応援を続けた朋香だったが、
結局、第一試合は黒星となってしまった。

行きのプリン騒動といい、負けてしまったのは悔しいが、
お昼からは黄金ペアということで、リベンジを宣言すると
一旦、2人はお昼の時間にする。


「桜乃はリョーマ君と食べるよね!」

「//…う、うん…ごめんね…」

「ほら気にしない気にしない!
 私はその辺のベンチで食べてるから、またあとでね!」


桜乃が去った後、朋香はベンチでお弁当を食べ始める。
そんな朋香にそっと近づく1人の男。

赤い髪、立海大のジャージを来た男は朋香の横へと腰掛ける。


「何1人で食べてんの?さっき応援してくれてたよね。
 あれ~もう1人の子は~?」

突然後ろから声を掛けられた朋香は
青学の先輩か誰かだと思い油断して顔を上げる。

しかし、声の主を見ると思わず声を荒げてしまった。

「ああーっ!さっきの焼きプリン!」

「俺は丸井ブン太だって!シクヨロ♪キミは?」

「誰も自己紹介してくれなんて言ってませんけど!
 それに応援はしてたけど、青学を応援してたんです!」

「へぇ~まぁどっちでもいいや。見ててどうだった?俺の天才プレー」

「おあいにく青学にしか興味ないんで」

「そんなこと言うんだー。俺せっかくこのプリン
 キミにあげようかなぁって思ってたんだけどなぁ」

「っ!?何で知ってっ」

「試合中にあんな大きい声で叫ばれたらこっちも分かるって。
 それに俺、あんまりプリンは好きじゃないからな」

「ヒドっ。じゃあ何で買ったんですか?」

「最後の1つだったし、迷ってたじゃん。
 だから俺が選択肢を減らしてあげたんだよ」

「何それ!?私それすっごく楽しみだったのに~!」

「どーしよっかなー」

ブン太は小さい子をからかうかのように、
持っていた焼きプリンをチラつかせる。
その態度が余計に朋香を腹立たせ、遂に朋香は最後の手段に出た。

「っ……ひど…いっ……っもう……もう…いいです……っ……」

朋香は下を向き肩を震わせ傍から見れば泣いてるように見えた。
その姿を見てブン太は慌ててプリンを差し出し謝る。

「お、おい何も泣くことねーだろ!?わ、悪ぃ。っごめんな、ごめん!」

その打って変わった慌て方に今まで腹を立てていた朋香も
思わず声を出して笑ってしまった。

「あははははっ」

「!?」

「そんなことで私が泣くわけないじゃない!」

朋香は勝ち誇ったようにブン太を見上げそういった。
その態度にブン太もむきになって…。

「性格悪っ」

そう言うと朋香の横に腰掛け、プリンを食べ始めた。

「あーっホントに食べちゃった…」

「うまー。やっぱ試合の時には甘いもんだよなぁ」

「………いいなぁ……」

「……お前なぁ…………はぁ~………ったく」

先ほどのことで怒っていたブン太も、
隣で羨ましそうにじーっと見つめる朋香に遂に折れてしまった。

口元に運ぶ予定だった一口を、
横で食べたそうに見つめる朋香の口へと運ぶ。

「ん~っおいし~っ!!!ありがとうございます!!」

「…ったく調子いいヤツ。
 俺さ、いつも試合前はケーキ食ってたんだけど、プリンも旨いな」

そして暫らくすると、さっきまでは白熱していた2人も
気がつけばお互いがお互いを許し合っていた。
食べ終わった後も暫らくテニスの話や食べ物の話で盛り上がり、
先程までの争いが嘘のようだった。

「甘いもの好きなんですか?」

「もちろん。お前も?」

「はいっ!何で分かるんですか?」

「だって美味しそうに食うから。
 俺、美味しそうに食うやつが好きだからさ。
 ………って、い、今のは変な意味じゃないからな///」

「///わ、分かってますよ。…あ!もうすぐ午後の部だ」

「あぁ、そうだな。じゃあ俺はそろそろ行くな。
 …さてと今からはまた敵同士だな!」

「そうですよ!……っでも!…今度お礼したいから連絡先教えて下さい!」

「オーケー。その代わりお前の名前と連絡先も教えてくれよ?」

「…はい。えっと名前は…小坂田朋香。で、アドレスはー」

「よーし。じゃこれからは朋ちゃんね。
 はい、これが俺のアドレス。それじゃ俺行くから、じゃね~」

昼休みのあっという間の出来事だったが、
その出来事が朋香の心を大きく動かした。

破かれたノートの片隅に書いてある
電話番号とメールアドレス、そして名前。
青学を応援するはずの朋香が心の中では別の名前が響いていたのだった。

「丸井ブン太さん……か」

もう一度紙切れを見て胸に手をやる。


(これって………恋……なのかな…?)


朋香はあやふやな気持ちのまま、この日の試合を応援するのだった。
この先の気持ちが分かるのはもう少し先の話。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ブン太×朋香というよりブン太→←朋香って感じですね。
お互いが惹かれだしたきっかけみたいな物語。
他校×朋ちゃん推しですが、朋ちゃんCPでかなり上位に来るブン朋。
明るい所とか、元気な所とか、相性ピッタリだと思うんです。
実は珍しくこの話2部構成になってるんです。
なのでまた続編もそのうち移動してきます。
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