梅雨が明け、毎日が晴天でレジャーシーズン真っ只中のある日ー
聖ルドルフ学院の寮の一室では先程から沈黙した空気が漂っている。

折りたたみ式のテーブルを挟んで観月は読書、朋香は宿題と、
傍から見ればデートとは思えない光景だ。

「ねぇ観月さーん」

「…やれやれ…これで5回目ですよ」

「だって…勉強はかどらないんだもん…」

「この宿題が終わるまで喋らないって宣言したのは貴女ですよ?
 …だから図書館に行こうと言ったんですが」

「うう…わかりましたよー。
 じゃあ今度こそホントに話しかけないからね!」

ふて腐れたかのように朋香は再び目の前の宿題に集中する。
今日はデートの約束だったが、夏休みの宿題が残っているという朋香に、
観月は宿題は早めに済ますべきだと言い、
早めにといっても1週間前に夏休みが始まったばかりにも関わらず、
結局デートではなく、一緒に宿題をすることになったのだ。
とはいえ、観月はもちろん既に宿題は終わってしまっており
自主的な学習に取り組んでいるとか。

そして図書館に行くと眠くなるという朋香に、
それならと観月が寮に連れて来たのだが、つい話をしてしまう。
全然進まない宿題を見て朋香は、持って来た1教科が終わるまでは
話さない!…と先ほど宣言したところだったのだ。


「………」

「…………」

今度こそ本気になったのか朋香は真剣な様子で
問題をテキパキと解いている。

ただ、10分経っても、20分経っても、
何も話してこない朋香を見て、逆に心配になったようで
30分経った頃、観月から声をかけてみた。

「朋香さん?」

「………」

「あのー…朋香さん?」

「………」

「ちょっと聞いてますか?」

「……3回目」

どうやら集中していたのは、
先ほどの仕返しがしたかったからのようだ。

「まったく…何をムキになっているんです?」

「ムキになんかなってませんよ。
 観月さんが勝手に話しかけてきただけですって」

「その態度がムキになってるって言うんです!」

「へぇそれは知りませんでしたー。
 あ、勉強してるんで静かにしてもらえます?」

「…っ!!」

朋香の逆襲で険悪ムード全開になった時、
そんな2人を止めるかのように木更津が入ってきた。

「はい!ちょっと邪魔するよ!2人とも今大丈夫?」

「何ですか?今日は部屋に入ってくるなと言ったはずですが…」

「声、外まで聞こえてたよ。
 …あの会話、恋人同士とは思えないね、クスクス…」

「…盗み聞きとは…いただけませんね」

「は、恥ずかしい…///」

「ほら、ちょうど3時だし休憩しない?
 アイスティーと裕太から差し入れのケーキを持って来たんだけど…」

「わぁ!ありがとうございます!」

険悪ムードだった2人だが、ひとまず休憩に入り、
木更津のおかげで空気も少し和やかになった。

そしてケーキを食べ終わる頃には
先ほどの出来事はなかったかのような雰囲気に…。

「ケーキ美味しかったです!」

「これ裕太のお薦めのケーキなんだって。
 ケーキ好きの裕太が言うから美味しいはずだね」

「ホントありがとうございました!」

「いえいえ。…そうだ、これから2人で散歩でもしてきたら?」

「………」

「………」

互いに見つめ合い、どちらが切り出そうかと無言になる。
先ほどのことをお互いが反省している証拠でもあるが、
少しの間を置いて観月が切り出してみた。

「ええ…行きましょうか」

「…はい!」

「先ほどは大人げなかったですね、すみません」

「私こそあんな態度…ごめんなさい」

観月につられて朋香もすぐに謝罪をする。
そして互いに目を合わせると罰が悪そうな顔で笑い合った。

「…クスクス…やっと恋人同士っぽくなってきたね」

「…//」

「んふっ“っぽく”じゃなくて恋人同士なんです」

「はいはい。じゃあ俺は部屋に戻るよ」




木更津の助言もあり、2人は寮の前の公園を散歩しにやってきた。
気持ちよさそうに外の空気を吸って笑顔になる朋香を見て、
観月も1日中勉強はやりすぎだったと少し反省をしつつ
周りに誰もいないことを確認すると朋香の手を握った。

「観月さん//」

「彼に恋人同士“っぽい”なんて言われてしまいましたからね。
 人前でこういうことは苦手ですが、たまには…いいものですね//」

「嬉しい!」

「少しはスッキリしましたか?」

「はい!これなら勉強もはかどりそう!木更津さんにお礼言わなきゃ」

「ええ、ボクからも言っておきますよ。
 帰ったら彼が読みたがっていた歴史小説の最新巻を渡しましょう」

「今日はホント楽しかったです」

「ええ、ボクもそう思います。
 ですが、過去形なのはまだ早いですよ?まだ宿題が残ってますしね」

「うう…わかってますよ。やっぱり観月さんって鬼です!」

「ええ、何とでも。今は鬼でもこれが終われば、
 この先の長い夏休みずーっと一緒にいられますし」

「…!!ホントだ!私、頑張ります!」

「夏はまだ始まったばかり。祭りや花火、色んなイベントがありますよ」

こうして無事、仲直りをした2人。
寮に戻ると、これまでの集中力とは比べ物にならないくらい
真剣に宿題を進め、家に帰ってからも夏のイベントに向けて
猛ダッシュで宿題を終わらせた朋香だった。



ーEND?ー



数日後…

「もしもし観月さん?」

「どうしました?」

「明後日お祭りがあるんですけど行きません?」

「人の多い場所は行く気がしませんね。よくあんな人が集まるー」

「ちょっと観月さん!宿題終わったらお祭り行ってくれるって…」

「お祭りや色んなイベントがありますとは言いましたが、
 一緒に行くとは言ってませんよ。だいたいいつも貴女はー」

「っ…やっぱり観月さんの鬼ぃー!!!」



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ちょっとネタよりの観月×朋香でした☆
観月の策略に見事はまってしまった朋ちゃん。
観月は意地悪だけど愛があるのでLove is OKだと思っています(笑)
鬼の観月だけどテニスの試合と一緒で緩急をつけて
イイ感じに朋ちゃんと付き合ってそうだなぁー(*^^*)
まとまり悪かったので、おまけエピソードでカバー。
観月は人混み行くイメージがないです。
きっと花火も遠くから眺める方が好きな気がする。
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