あれ…これってショパンの…
前に土浦くんから借りたCDに入っていた別れの曲だ。
でもこの音、土浦くんじゃないよね。
こんな時間に一体誰が…
扉越しに耳を傾ける。
うっとりするくらいキレイな音色…。
思わず目を閉じて聴き入ってしまう。
そして演奏者が気になった香穂子は
扉をそっと開けて、微かな隙間から覗いてみた。
ー!!
柚木先輩!?
弾いていたのが柚木だと分かると、改めてじっくり耳を傾ける。
先輩のピアノ、初めて聴くなぁ。
あんな裏の一面があるとは思えないくらい
心地よくて優しくて…
別れの曲…だけど凄く前向きな旋律に聴こえる。
その時ー
「…誰?」
「…!!…ご、ごめんなさい!」
「…何だお前か」
視線に気づいた柚木がやってくると香穂子を室内に引き入れる。
こそこそ聴くのではなく、聴くならここで聞けと言わんばかりに。
「…先輩、ピアノも弾けるんですね」
「音楽科をバカにしているのか?」
「ちがっ…そうじゃなくて…ただ凄くキレイな音だったから」
「楽器は想う気持ちによって音色が変わる。
お前のヴァイオリンもそうだろ」
「…先輩は何を想って弾いていたんですか?」
「…」
ずっと気になっていた。
柚木先輩はいつも笑顔でみんなの中心にいる人で、
だけど私にしか見せない違う一面もあって。
でも音楽を演奏しているときの先輩はいつも自然で、
裏表のない素の柚木先輩のような気がした。
想う気持ちで音色が変わるのなら…
一体、先輩は何を想って演奏しているのだろうか。
「…香穂子」
ー!!
「もう…またいつもの冗談ですね」
「冗談じゃないって言ったら?」
「何言ってー」
柚木はピアノの前に立つ香穂子に近づくと
そっとその髪を撫でる。
「俺はいつも香穂子を想って弾いている」
「柚木先輩…///」
からかわれることは日常茶飯事。
いい加減慣れないといけないのはわかっているけど、
どれだけ意地悪をされても、この近距離で
先輩を見ているだけで身体が熱くなってしまう。
「もう…そうやっていつも」
「これは本心だ…って言ったらどうする?」
「…どうするって///…それはこ、困ります」
「困る?」
「だって…そんなこと言われたら…本気にしちゃいます///」
香穂子は半ば泣きそうな表情で柚木を見つめる。
そう、どれだけ意地悪をされても、からかわれても
私にしか見せないこんな一面を見続けてきた内に
いつしか本気で先輩のことが好きになっていた。
もう気持ちが抑えきれない…
どうせなら、見込みなんて少しもないって
突き落として欲しい。
辛そうに目を背ける香穂子の腕を引くと
柚木はそのままギュッと抱き寄せる。
「…それでいい。本気になって欲しい」
「…柚木先輩…」
顔を赤らめてうつむく香穂子の顎を軽く掴んで引き寄せると
そのまま唇にキスをする。
戸惑う香穂子は暫し固まっていたが、柚木の表情が
真剣なものだとわかると、それに応えるようにキスを返した。
「/////」
「香穂子…俺はこれからもお前を想って演奏する。
だからこれからもずっと俺だけの音楽を聴いて欲しい」
そして耳元で囁くー
“お前が好きだ”と
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
コルダ第2弾!今度は柚木が日野ちゃんのことを苛めつつ
実は大好きなんだと実感して告白するバージョン(*´ω`*)
やっぱり書いてて楽しい♪柚木ってば捻くれてるんだから(笑)
コルダはアニメ→漫画でハマったため(漫画は途中で停止中…)
ゲームはしたことがないんですが、某動画サイトで
柚木ENDを見て悶えておりました(*ノωノ)ゲームしたいなぁ…
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