◆第1話/出逢ってしまった2人◆
頭が重い…
私…どうしちゃったんだろう…
あ…
そうだ。
頼まれた花を届ける途中で急に眩暈がして…
ボーっとして…
目の前が真っ白になった。
そしたら誰かの声が聞こえてきてー
・
・
・
木ノ葉を偵察しにきた途中、山の中で倒れている女を見つけた。
気にせず放っておこうと思ったけれど…
その容姿がオイラに通じるものがあり何故か気になった。
とりあえず声かけてみようかな、うん。
「おい」
「……」
「大丈夫か?」
「……」
反応なし…か。
仕方がない。さっき空き家があったから、そこまで連れてくか。
本当はオイラの隠れ家にしようと思った場所だけど、
まぁ目を覚ませば出て行くだろう。
デイダラは周りを見渡し、誰もいないことを確認すると、
その女を抱きかかえ、古く誰も近寄らないような空家へ連れて行った。
それにしても…
可愛い寝顔だなぁ…うん。
その上、細くて白い腕、首筋、そしてキレイな髪。
つい見惚れてしまう。まるで幻術にでもかかっているみたいに。
まつ毛長いなぁー…それに何だこの感触。
女ってこんな……うわー唇きれー…
デイダラは無意識に唇を奪う。
…ってオイラ何してんだ!?
男だらけの中にいるからって、まるで飢えてるみたいじゃねェか!
「ん…んん……あ…あれ……私ー」
…!!!
デイダラが自問自答をしていると女が目を覚ました。
さすがのデイダラも焦ったが、
幸い唇が離れていたタイミングだったので胸をなでおろす。
「お、おう、気がついたか?
ここは山の中にある空き家だ。お前そこで倒れてたんだぞ」
「…ごめんなさい迷惑かけてしまって…。朝から頭が重くて…
立ち眩みがしたと思ったら………あっ…あれ花は!?」
「花?」
「花の配達の途中だったんです。家が花屋をしていて…」
「だからエプロンしてたのか…」
「そう、木ノ葉の“やまなか花”っていう花屋なんですけど…
あっ私、まだ名乗ってもなかったですね!
山中いのって言います。…あ、そう!で、その……花は?」
「げ…花ならそこにー」
指を刺す方を見ると、花束だった花がバラバラに置いてあった。
というより、正確には落ちたままになっていた。
いのは慌てて拾い集めると、
デイダラが見惚れるほどの速さで茎をカットし、新しく花束を作った。
「す…すげぇ……アートだ!並び方1つでこうもキレイになるのか!」
キラキラとした表情で喜ぶ彼を見て、いのは嬉しくなる。
「でも落とした時に少し踏んでしまったみたいだから
これは売り物にならないのよねー。そうだ!これあなたにあげる!」
「オ、オイラにか!?」
「そうよ。助けてくれたお礼に」
「こんなキレイなアートは久々に見たぜ。ありがとな」
今度は元気いっぱいの明るい笑顔。
驚いたり、喜んだり…表情がころころ変わる彼を見ていると
初対面なのに何故か癒される。
「…ってもうこんな時間!じゃあ私、そろそろ帰ります。
少し横になったら回復してきましたし…」
「ちょ…お、おいお前!」
帰ろうとするいのを思わず引き留める。
いの同様、デイダラも同じだった。
先ほど勢いでキスをしてしまったからではなく、
花を大事にしている姿やその芸術的センス、
キレイな容姿、全てに引き込まれ、
初対面にも関わらず惹かれていたのだ。
「オ、オイラお前のこと気に入った!だからお前、オイラとー」
そこまで言った時、デイダラの目が見開く。
いのが帰ろうとして、巻いたままだったエプロンを取ると、
そこには木ノ葉の額当てがしてあったのだ…。
ーまさか…木ノ葉の忍!?
「…うっ……」
気づいた時には体が反応し、
一瞬にして、拳をいのの鳩尾にぶつける。
(……っあなた一体……)
突然の痛みに気が動転し、訳も分からぬまま再び眠りにつく。
悪ぃな。オイラお前のこと気に入ったんだけど、忍なら話は別だ。
ー気に入ったんだけど……。
「少しの間だが楽しませてもらったぜ。ありがとな、うん」
そう言うとそっと抱きかかえて横に寝かせた。
いのは次に目を覚ますと木ノ葉病院のベッドで眠っていた。
重い身体をなんとか起こして、状況を理解しようとする。
「いの!気がついた!?」
「…サクラ…」
「アンタ山の中で熱出して倒れてたのよ。
誰かが通りかかった人が助けてくれたのか、
メモが届けられて知ったんだけど…」
「メモ…?」
「でも変なのよねー。小さな鳥みたいなのが運んできたかと思ったら、
一瞬で去って行ってしまったし。それに一体誰が…」
そう聞かれ、先ほどまでの記憶を思い出そうとするが、
思い出そうとすると腹部が痛んだ。
「…っ…痛い……」
「ちょっと!無理しちゃだめよ。
倒れた時どこかにぶつかったのか肋骨にヒビ入ってたんだから」
「それでこんな痛いのね……ごめん、ちょっと寝てもいい?」
「ええ、そうした方がいいわ。じゃあまた後でね…」
サクラが去った後、ゆっくり思い浮かべてみる。
山で会ったあの人を。あれは夢なんかじゃなかった。
金色の髪、印象的な瞳、優しい態度…。
笑った顔がキレイで、花をアートだって喜んでいた。
なのに帰り際に見えた裏の顔。突然の攻撃。何だったんだろう。
だけど…
私を助けてくれたことには変わりない。
あの人が悪い人なのか良い人なのか、何だったのか分からない。
名前も……聞いてなかったな…。
それでもやっぱり私はー
あの時過ごした2人だけの時間がホンモノだと信じたい。
名前も知らない人だけど、
たった短い時間だったけど、楽しかった思い出。
ただ…あの人が良い人でありますように…
それだけを祈って…。
ー第1話 ENDー
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