黒くて長くウェーブのかかった髪。真っ赤なルージュ。
ロングコートを羽織って、サングラスをかけている女性。
彼女が店の敷居をまたぐとすぐに分かる。
「いらっしゃい」
「いつものお願い」
「はいよ」
その人はぐるりと一周見渡し、そして1番端の席に腰掛ける。
サングラスをしているので分からないが、凄く美しい人だろうと思った。
「…イルカ先生、どこ見てるんだってばよ?」
「あっいや、別に」
ナルトに悟られないようにイルカはラーメンを食べ始める。
(………やっぱり、いつ見てもキレイな人だなぁ)
ラーメンを食べていても、つい目線がその女性へといく。
一見こんなラーメン屋さんに無縁な感じもするが、
実はナルトやイルカと同じく常連客なのだ。
そんなギャップに魅力を感じ、
密かにイルカはこの女性に想いを馳せていた。
その思いは日に日に募るばかりでー
名前も素顔も知らないその女性に恋焦がれるのだった。
「ーで、サスケの奴が……ってイルカ先生?」
「…!!あっいや、その何だ?」
「べっつに。もういいってばよ」
気付くとナルトの器は空になっており、
待ちくたびれた様子で帰って行ってしまった。
今まで生徒のことしか頭になかったのに…と
イルカはナルトに悪いことをしたと肩を落とす。
ようやく食べ終わり店を出るが、気になって仕方がない。
一楽の前で少し女性が出てくるのを待ってみたが、
出てきたところで声をかける自信もなく…。
結局いつも帰ってきてしまうのだった。
(自分でも情けない…)
イルカが自分の自信のなさに落ち込んでいるとー
「こんなところで何してるの?」
「紅先生!?」
任務の帰りか、通りかかった紅が声をかける。
「そんな沈んだ顔して…。恋の悩み…かしら?」
「…!!」
「分かりやすいのね」
ごまかそうとするも、相手は紅。
抵抗しても無駄だと気付き、紅に相談をしてみる。
「で、その名前も顔も知らない人に一目惚れしたのね」
「…っ…ま、まぁ…気になると言いますか…」
「声掛けてみようと思わないの?」
「い、いやオレはその…」
「はっきりしない男は嫌われるわよ」
「……」
そんな矢先イルカに絶好のチャンスが訪れた。
イルカが一楽を出ようと勘定をしていると、その女性が先ほどまで
座っていた場所にハンカチが忘れられているのを見つけた。
(これあの人の…)
イルカはそのハンカチを持ち、慌てて女性を追う。
…が、イルカより少し前に出たので、さすがにもういない。
「…やっぱり遅かったか」
諦めて、次の機会を待つことにしたイルカだったが、
ふと残されたハンカチを裏がえした時ー自分の目を疑った。
そのハンカチの裏には赤い刺繍でー
“KURENAI”
と縫い合わせてあった。
イルカの知っている人でこの名前はただ1人。
「紅先生!」
「どうしたの?そんな息切らして…」
「あの…このハンカチー」
「あら、失くしたと思ってたんだけど…ありがとう」
ハンカチの持ち主がわかりほっとしたが、
イルカが気になるのはやはりー
「…あ、あの、それ一楽にあったんです。
…もしかしていつもコートを羽織って来ている女性ってのはー」
違っていたら失礼かと思い、恐る恐る聞いてみる。
すると紅は想像していたよりも、
あっさりとあの女性が自分だということを認めた。
「何だか一楽の常連って知られたら何言われるか分からなくて…。
それで変装して通っていたのよ」
「っそんな…。だったら何で言ってくれなかったんですか!」
「楽しいでしょ、その方が」
「からかうなんて…」
「からかっていないわ。だから助言をしたのよ、
はっきりしない男は嫌いだって」
「……」
「今度会った時は見つめるだけじゃなくて、ちゃんと話かけてね。
あんなに見られていたら食べづらいのよね…」
「…すいません」
「それに一目惚れってだけで好かれるよりも、
中身もちゃんと知って欲しいわね」
「紅先生…」
からかわれたと思い、少し腹を立てたイルカだったが、
理にかなった助言を聞いて、少しばかり反省した。
名前も顔も知ってしまったけれど、
そんな紅の性格を知り、イルカはさらに惹かれて行くのだった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初というか、今のところもう書く予定のない(笑)イルカ→紅でした。
何だかカップリング制覇しているみたいで嫌な気分…。
これは確かファンブックか何かで、紅も一楽の常連で、
変装してでも食べたいー的なことが書いてあったのを見て書いたネタ。
何だか紅がイジワルな人みたいですが、
木ノ葉のお色気担当ということで、紅先生のちょっとしたお遊びでした。
スポンサードリンク