慰霊碑に手を合わせていると後ろから気配を感じた。
行事でもない限りそうそうここへ来る人はいない。
来るといったら毎日ここへ来て手を合わせているあの人くらい。
「…いいんですか?時間」
「…ああ、今日は任務がないからゆっくりできるよ」
はたけカカシ先輩。
暗部時代にお世話になり、尊敬している人。
私と一緒で大切な人を亡くした人。
「…今日は特別な日なんです」
「ああ、知ってるよ。毎年この日はオレより長くここにいるからな」
「…ええ、特別な日だから」
特別な日ー
今日は恋人ハヤテの誕生日だった。
あれから3年以上も経ったのに今でも覚えている桔梗城でのハヤテの姿。
仇は討つと誓ったけれど、結局誰がハヤテを殺害したのか分からない。
「ハヤテ、誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
「私が1日先だったら、1日だけ同い年でいられるのに…
これだとまた差が伸びちゃうね」
「でも明日でまた1つ違いになりますよ…」
そんな風によく言ってたっけ。
ハヤテ、私あなたの歳を抜かしちゃったわ。
「先輩は…霊って信じますか?」
「んー?」
「私、気配を感じることがあるんです。彼が側にいるような」
「…」
今でも何だか、あなたが生きている気がするの。
出逢った当初は読めない人で、
いつも敬語で話す変わった人としか思っていなかった。
それが段々想いに変わって、そして通じ合い互いに惹かれた。
あの事件の数週間前に話したこと、覚えてる?
「月を見てると夕顔を思い出します」
「思い出す?思い出さなくてもいつもここにいるわよ」
「そうですね…」
ほんの些細な会話だったけれど、
あなたと見たあの日の月はずっと覚えているの。
月光ハヤテと卯月夕顔。
互いに月をもった同士、よく一緒にお月見したよね。
“いつもここにいる”なんて言ったのに、
あなたがいなくなったらダメじゃない。
「逢いたい…」
何年経っても尽きぬ想い。気配だけじゃ足りない。
あなたともっと話したかった。もっともっと触れていたかった。
慰霊碑の前で拝む夕顔は、暗部に所属しているとは思えないくらい
悲しみに暮れた切ない表情だった。
「…逢えるさ」
「…!!」
「オレは仲間が死んだ時、凄く後悔をした。オレがあの時ーってな。
だからどうしてもオレが間違っていたと伝えたかった」
「先輩は伝えられたんですか?」
「ああ。夢の中で伝えたよ。
アイツはいつも変わらぬ表情で笑ってくれた」
「夢…」
その夜ー
布団に入って目を閉じる。
夢でも良いから逢いたい。
この声があなたに届きますように。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
拍手リメイク作品です。…それにしても切ない…。
自分で書いたのに読み返す度に切ないです。
そして穢土転生でハヤテが生き返って夕顔を戦っていると知り
アニメで見ましたが、当時描きたかった2人の過去がちゃんと1つの話に
なっていて、それだけで感動。もっとハヤテの活躍やゲンマたちとの
掛け合いが見てみたかったんですが…。未だにバキが許せません(笑)
オビトへの想いも今こうして読み返すと、カカシが不憫に思えますね。。
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