「ハナビさん、一緒に修行しますか?」

「……大丈夫です」

首を横に振る。

ー私はネジ兄さんが嫌いだった。


宗家と分家の話は私が生まれる前だったので、
詳しくは知らないものの良い仲だとは言えないのは分かっていた。
中忍試験の後で父上とは和解をしたというけれど、
私はそんなことどうだって良かった。

ただ、ネジ兄さんは父上に贔屓されていて嫌いなのだ。


この人が宗家へ足を踏み入れるまでは、
いつも父上は私に跡継ぎだと言ってくれていた。
姉さんよりもできが良い、期待しているぞ、と。

なのに、和解をしてからはー




私が7・8歳だった頃は、宗家に恨みをもっていたネジ兄さんが
こちら側に来ること自体なかった。だから私も名前くらいしか
知らなかったし、興味もなかった。幼かったというのもあるけれど…。

中忍試験後、父上と和解をし、頻繁に家で修行するようになった。
この頃から何度か修行を一緒にさせられたり、
父上には手本にするようにと言われるようになった。




そしてあれから2年ー

今日もハナビは1人で木を相手に修行をする。
父上は自分がいない時はネジ兄さんに稽古をつけてもらえと言う。
だけど、1人でだってアイツを越えてやるんだ。

いつしか修行相手の木をネジと見立て修行に挑んでいた。
朝も昼も夜もずっと、アカデミーから戻ると毎日修行をした。


そんなある日ー

雷が鳴り響き、大粒の雨が降る中、ハナビは修行をしていた。
家の敷地内ということで安心感もあったし、
何より雨が降ったからといって休んでいられない。

いつも冷静な態度のアイツが嫌い。
いつも私を子ども扱いするアイツが嫌い。
姉さんに優しいアイツが嫌い。

そんな思いで自棄になり修行をする。

ーその時だった。

稲妻の光がはっきりと見えた数秒後ー
何かが割れるような音と共に雷が鳴り響いた。

「…っ」

気持ちは大人といえ、まだ10歳の少女。
甘く見ていた雷の凄まじさに思わず木の下に隠れこんだ。

そこへー

「ハナビさん!!」

「…!!」

ネジが慌ててハナビの元へ駆けつけると、
震えているその手を強く引き、宗家の中へと連れ込んだ。

「雷が鳴っている時に木の下にいるのは良くない。
 木の下は雷が落ちやすいからな」

「……」

「髪もひどく濡れている。ほら、タオルを使ってー」

「……うん」

ありがとうの一言が出てこない。
雷の恐怖から救ってくれた嬉しさもあったが、
同時に何だか恥ずかしくもあり、下を向いて頷くのが精一杯だった。




そして5年後ー

「ネジ兄さん、これ姉さんと作ったおにぎり。お昼にでも…」

「ありがとう。今日は修行、どうするんだ?」

「今日はこれから任務があるので。戻ってきたら相手して下さい」

「ああ、任務まで時間があるしな」

「デートなんでしょ」

「あ……」

5年が経ち、あれが私の初恋ということを知った。
好きということがよく分からず、その思いから嫌いと思っていた私。
素直になれなくて、いつも冷たく接してきた。

どうやら今、ネジ兄さんは姉さんと付き合っているらしい。
少し羨ましくもあるけど、姉さんといる時のネジ兄さんは
私から見ても穏やかで、とてもお似合いだった。


「…ありがとう」

「…何がだ?」

「ううん…何となく言いたかっただけだから…」

「?」

「さ、私はそろそろ任務に行ってきます」

「気をつけてな」

「はい」


ほろ苦く終わった初恋。
まだ少し未練もあるけれど、あと数年も経てばいい思い出となる。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
捏造200%なハナビちゃんの初恋物語でした。
ずっと片思いの初恋が書きたくて、色んなCPで試行錯誤していたら、
ふとこのハナビの初恋というテーマが舞い降りてきたのです。
ナルヒナの結婚式でネジの遺影をもって結婚式に出てくれたり、
今はナルトの子どもたちにメロメロなハナビがたまらなく好きです。
ネジ兄さんは死んじゃったけど、ハナビにも幸せになって欲しいな。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。