今までずっと“見ているだけでいい”そう思っていた。
自分にまだ自信がもてなくて、
みんなみたいに上手く話せなくて、
だけど、見ていることなら私にもできる。
ずっとそう思って目で追い続けてきた。
だけどー
「ナルトくん…」
第3演習場で修業をするナルトを心で応援していたが、
思わず声が漏れ、慌てて口を塞ぐ。
ーが、もちろんナルト自身は修業に夢中で
ヒナタがいることにも気づいていなかった。
「ヒナタ様?」
「…っ!!ネ、ネジ兄さん…」
そこに通りかかったのは日向ネジ。突然後ろから声をかけられ赤面する。
何をしているか聞かれ、ナルトを見ていたことに気づかれないように
話を作って振る舞うも、相手がネジということで無駄に終わった。
「ナルトを見ていたんですね」
「そ、そんな…私は…」
「…まぁいい。それよりテンテンに団子を貰ったんですが
良ければ一緒に食べませんか?」
そう言いネジは手に持っていた箱を見せる。
中には桜餡が乗った団子と抹茶餡が乗った団子が1本づつ入ってあった。
ネジは箱をヒナタの方へ向きを変えて問いかける。
「桜と抹茶、どっちがいいですか?」
「え……わ、私はどっちでもいいからネジ兄さんが…」
その回答を聞き、やはりな…という表情をすると、箱を横に置き、
もう一度ヒナタに選ぶよう尋ねていると、
さっきまで修業をしていたナルトが走ってやってきた。
「おーい!ネジー!綱手のばーちゃんが来るようにって
…っておお!これチョウジがいつも美味しそうに食べてる
甘栗甘の団子だってばよ!ヒナタ食べないのかー?」
「ナ、ナルトくん…」
「ちょうどいいナルト。お前ならどっちを選ぶ?」
「うーん…オレなら迷わずこっちだってばよ!サンキューなネジ!」
そう言い、桜餡の団子を取ると、頬張りながら走り去って行った。
「…あげるとは言ってないだろう」
ヒナタに選ばせようとしていたのに…と溜息をつくが、話を元へと戻す。
「ヒナタ様、ナルトが好きでナルトを見習っているのなら、
もう少しアイツのように自分の意思を持った方がいい」
「…ネジ兄さん…」
「前にナルトに気持ちを伝えないのか?と聞いたことがあったな。
その時あなたは“見ているだけでいい”と言った。
しかし、今のように誰かに取られてしまってからでは遅いですよ」
それだけ言うとネジはナルトを追い、綱手の元へ行ってしまった。
残されたヒナタはネジに言われたことを考えてみる。
自分では分かっていたけど、人に言われて改めて気づかされる。
(誰かに取られてから…か)
そしてそんな忠告をされてから数日経った頃、
偶然、楽しそうにサクラと並んで歩いているナルトを目撃する。
「サクラちゃんとデートなんて久しぶりだってばよ♪」
「何がデートよ!私は師匠に頼まれてアンタの報告書もらいにきたの!」
「げっ…オレってば書くのすっかり忘れてた」
「ったくもう、アンタのことだから書き方分からないんでしょ」
「だっていつもネジとかシノに書いてもらってたしー」
「言い訳はいいから今から書きに行く!私が教えてあげるから」
「やったぁー!サクラちゃん感謝するってばよ!」
聞くつもりがなくても耳に入ってきた楽しそうな声。
どこかで油断をしていたのかも知れない。
アカデミーの頃は問題児で、決して好かれる立場ではなかった彼だから。
だから自分に自信が持てるまで“見ているだけでいい”そう思っていた。
誰かに取られてしまうという選択肢を予想していなかった。
目を閉じ自分の気持ちを確認する。
好きな気持ちは言わなきゃ伝わらない。
見ているだけでいいなんて……もう言いたくない!
自分の気持ちに整理がつくと、意を決してナルトの元へ向かう。
嫌われても、どうなっても…
誰かに選択肢を奪われることだけはしたくない。
私は今まで後悔ばかりしてきた。
だけどこれだけは…後悔したくない!
「ナ、ナルトくん!」
「おう!ヒナター、どうしたんだ?」
「あ、あのね…ナルトくん。
……わ、私と!……つ……付き合ってください!」
「ん?どこへ?」
顔を真っ赤に染めて告白した勇気。
だけど、ナルトの反応は相変わらずで…。
それでも私の勇気の第一歩となった。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初めてのナルヒナ。ヒナタの片思い編でした。
ヒナタはモジモジちゃんだけど、自分の意思で忍になったし、
何より努力している姿がもうカッコ良くて、
アニメオリジナルのヒナタ活躍編(勝手に命名)は何度も見返しました。
ネジとのCPも良いけど、やっぱりナルヒナかな。
BORUTOを見始めてヒナタの母感がたまらなく好きです☆
また大人編もいつか機会があれば書いてみたいと思います。
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