◆第4話/タイムリミット◆


「これより山城アオバを隊長とし、
 秋道チョウジ、山中いの、アスマ班の援護に向かってくれ」

「はい!」

綱手様の命を受け、私たちはアスマ班の援護に急いだ。

情報では暁と遭遇したとのこと。
アスマ先生やシカマルが気になる一方で、
いのはその暁がデイダラでないことを祈った。


アスマ班に追いつくと、戦闘相手を見て一安心する。
仲間だということには変わらないが、デイダラではなかったからだ。


しかしー


「アスマ先生!!」

「いの、急いでアスマを」

「わかったわ!」

負傷をしているアスマを見て、その傷の大きさに衝撃を受ける。
慌てて治癒を施すいのだったが、心音を聞いて涙が溢れた。

あらゆる臓器がボロボロで、もはや打つ手なしの状態だったからだ。

「ア…スマ先生……そんな…」

私の力ではもうどうしようもできない。
死にゆく恩師を見ているだけしかできないなんて。

何よりー

先生を助けられなかった自分に、
こんな非情な暁の一員を好きになった自分に怒りを覚える。

アスマ先生の死を持って痛感した。
自分がどれほどバカだったかを。

暁の残酷さを目の前にして、
いのは自分の気持ちがどうでもよくなった。

ただ言えるのは、アイツらが憎いということ。


許さない。
先生の命を奪ったアイツも、仲間のアンタも。


いのの目が怒りの目に変わった。


「…許さないから」

そう呟き、いのは木ノ葉に戻ったその足で隠れ家へと向かった。





隠れ家に着くと、勢いよく扉を開ける。
中にデイダラがいるのを確認すると、
いのはクナイを構えてデイダラに振りかざすー

「…いの!?お、おい…」

「……」

恨み、憎しみを力に振りかざすが、簡単にその手をつかまれる。
クナイを持つ手が震え、再び涙がこみ上げてくる。

「どういうことだ!?言っておくが、
 オイラをそんな刃物じゃ捕まえることもできねぇぞ」

「…スマ…アスマ先生を返して!!」

「…一体何のことをー」

いのの言っている意味が分からず驚くデイダラだったが、
先ほどの集会で聞いた話を思い出した。

「…くそ…飛段と角都がやったやつかよ…」

「とぼけても無駄よ!私、目の前でアンタの仲間見てきたんだから!
 アイツのせいで…先生は…アスマ先生は…」

「アイツらとオレは違う!」

「違わない!」

「オレは……オレは殺しを楽しんだりしない」


ー!!


いのの瞳から涙がとめどなく溢れる。

この人の目は真実を語っている。
嘘なんかじゃない。目を見ればわかる。

それに今「オレは」って言った。
いつもの口癖が出ないくらい真剣なんだ。


「でも…でも殺したんでしょ、我愛羅さんを」

「…リーダーの命でだ」

「でも…!!……やっぱり解らない…理解できない」

「…これだけは言っておく。
 オレはお前がどれだけクナイを突きつけようと、
 殺しにこようと気持ちは変わらない」

そう言うと、強引にいのを引き寄せ唇を押し当てる。
そして離れ際に耳元で囁くー


「お前を好きな気持ちは変わらないから」


その言葉にいのの憎しみや決意は粉々に砕け散ってしまった。
あんなに憎んでいたのに、たった一言で壊れてしまう決意。

こんなに胸が熱くなる恋なんてなかった。
こんなに人を好きになるなんて知らなかった。

だけどよりによって、それが暁のあなただったなんて。


私は一体どうすればいいのー?


好きなのにそれを認めるのが怖い。
私は木ノ葉が好き。裏切るなんてできない。

やっぱりこれは禁断の恋なのよ。叶えることは決して許されない。


「……私ってよく言われるけど、ほんっとバカなのよねー」

「いの…?」

「バカだからさ…バカだから……あなたと別れられない…」

「……」


苦しい。こんなにも好きになった人が自分の敵だなんて。

溢れる涙を見せないように顔を隠すいの。
そんないのを見てデイダラは決意をする。


「……オイラはいのが好きだ。それは変わらない。
 だけどオイラ、お前が泣いてるのは見たくないんだ」

「…デイダラさん…」

「…元々こういう結末は予想できていた。
 きっと今までしてきたことが自分に返ってきたんだな、うん…」

「でも私はー」

「オイラもお前が大好きだ。だけど好きだからこそ
 いのにはもっともっと幸せになって欲しい」

そう言って無理に笑顔を作るデイダラ。
いのは、もう何も言わないでと言わんばかりに顔を涙で濡らす。

その涙は悲しさだけではなく、最後まで自分のことを考えてくれる
デイダラの優しさに対する嬉し涙も混ざっていた。

「ありがとう…」

いのは声にならない声を絞り出し、礼を告げる。

デイダラはいのの方を振り返らずに暁の衣を羽織り、
後ろを向いたまま一言…

「今までありがとう」

そう言って去って行ったのだった。



ー第4話 ENDー


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