街中がキレイなイルミネーションに染まる季節。

クリスマスを楽しむのは日本も同じなのね、と
ビアンキは1人イブの街を歩く。

その両手にはどっさりと材料の入った袋が4つ。
弟、隼人にクリスマスケーキとクリスマス料理を作ろうと
ショッピングモールへ買い出しに来ていたのだ。

しかし材料がぎっしり入った4つの袋は
いくらビアンキでも重く感じていた。

時折ベンチに荷物を置き、持ち直して運ぶ。


(…寒いわ…)


向かいにあるショーウィンドウに映る自分を見て溜息をつく。
確かに12月下旬の冬は寒い。
しかしビアンキは自分の何かを期待している様に溜息をつくのだった。


(心が寒い…)


こんな荷物を担いで、料理を作ったところで、
隼人が食べてくれるはずもない。

それに隼人は隼人でクリスマスを一緒に過ごす人がいるようだ。


(私にも一緒に過ごせる人がいたらー)


ー!!


そう思った時、ショーウィンドウ越しに男と目が合った。
いつもはこんなショッピングモールになど来ないのに、
こんな所で会うなんて。

お互いが引き寄せられたかのように、歩み寄る。


「シャマル…」

「いやぁマイハニー!
 クリスマスに会うなんてこれってやっぱり運命ってヤツ?」

そう言ってビアンキが抱えていた重い荷物を軽く持ち上げる。

「…こんな所で遭遇するなんて」

「切っても切れない仲ってヤツかもね♪
 それよりさぁーせっかくのクリスマスだしデートしない?」

すぐにビアンキの鉄拳が来ると思い構えるも、
ビアンキは黙ってまっすぐ進む。

「珍しい。もしかしてまたオレに惚れた?」

「…その荷物を下ろしたら存分に楽しませてあげるから」

「それは勘弁。それよりこの材料、アイツにだろ。
 またポイズンクッキング食らわす気か?
 オレ嫌だぜ、クリスマスに男診んの」

「……」


ビアンキは心の中で自問自答していた。

何故、私はシャマルに荷物を運ばせているのだろう。
何故いつものように蹴りを入れたり、殴ったりしないのだろうか。

普段の私なら答えは1つ。
荷物は重いし、シャマルを蹴っても材料が吹っ飛ぶだけ。
当たり前のことだ。

だけど今日の私は何故か殴る気になれない。
何故かこの人を待ちわびていたような想いだった。


(年上の男は懲り懲りだったのに…)


ビアンキの想いを変えたのもクリスマスの雰囲気なのか。
ビアンキがずっと心の奥にしまっていた本音を引き出してくれた。


「ねぇ~ビアンキちゃん、どうしたの?立ち止まっちゃってさ」

「私…本気よ」

「え…マジ!?殴るのは勘弁してよぉー」

「…あなたのこと」

「?」

「あなたが本気なら私…」


意味が分からず疑問符を並べるシャマルだったが、
ビアンキのツンとした表情が
一瞬ピンク色に変わったことは見逃さなかった。


「…なるほどじゃあ試してみるか」

「え…」

「本気かどうか。家でさ」

「…で、でも隼人に……」

「お前の本気、見せてくれよ」

「……」


自分がどちらを選ぶか分かっている態度にムっとしつつも、
ビアンキはシャマルの思惑通り、シャマルについて行ったのだった。


クリスマスとは不思議なもので、
人の決意や想いを簡単に変えてしまう。


まるでクリスマスの魔法にでもかかったかのように。


(クリスマスなんて大嫌い)


心ではそう思っても、
隣で歩く彼を見ると、そんなことも忘れてしまう。

私にもいた、クリスマスを一緒に過ごす相手がここに。


「ほら、行くぞ」

「…ええ」


クリスマスのイルミネーションに囲まれながら
2人肩を並べて歩いていく。


「……携帯の電源は切っておくことね」

「また昔のことを…でも大丈夫だ。
 オレは今、横にいる美女にしか興味ねぇからさ」


以前なら寒気がするようなこの台詞もー


「…あなたを信じるわ」


こんな台詞に変えてしまうのは、
やはりクリスマスの魔法のせいかもしれない。


「ビアンキ」

「?」


不意に呼ばれて振り返ると、その頬に一瞬唇が触れる。


「メリークリスマス」

「…メリー…クリスマス//」


再びビアンキの頬がピンク色に染まった。



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初リボーンSS、初シャマビア、初だらけのSSでした。
リボーンCPで1番好きなシャマビア。
2人が並ぶと絵になるし、とにかくリボーン小説版にキュン死(*ノωノ)
ああいうサイドストーリーかなり好きです。
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