“女でも叩きます?”


“以後気をつけます。ラクス様の前では”


そう言い残し部屋に戻ったルナマリア。
今日は久々にオフの日だ。せっかくなので、ディオキアの街を
散策しようかと思ったけれど、1人じゃつまらない。
誘おうとした相手とは、ついさっき喧嘩をしてしまった。


(あんな言い方…私すっごい嫌な女じゃない…)


ルナマリアは先程のアスランとの会話を思い出し、自己嫌悪に陥る。

妹メイリンと買い物でも行こうかと思ったが、一緒に出掛けても、
また妹の優柔不断で長い買い物に付き合わされるだけだ。

こうして結局ルナマリアは1人で街へ出かけることにした。


なのにー


“シンと行けば良いじゃないか”


“誤解なんだ君の!”


“そういう態度を取られるのは”


“ルナマリア!”


駄目だ。何をしていても気が付くと彼のことばかり考えている。
アスラン・ザラ。最初は有名エリートだとしか思っていなかった。

それが、いつの間にか好意を抱きはじめ、嫉妬までしてしまう始末。
アスランには決まった相手がいるのも知っているのに何で…。


「好きです。」そう簡単に言えたらどんなに楽かー。


(とは言え、やっぱりさっきの態度は謝るべきか…。
 さすがに隊長に向かってあんな口の利き方はマズかったよね)


後輩のシンが同乗するエレベーターで恥をかかせたこと、
さすがに悪く思ったルナマリアは、街に出るのを止めて
ミネルバへ戻って行った。





艦へ戻るとアスランを探す。


謝罪の気持ちは本心だった。
エリートのアスランはもちろん、ルナマリアとて赤服の軍人だ。
さすがに隊長に向かって喧嘩を吹きかけることは
態度の悪いシンと同類に感じて後悔をしたのだった。


だけど…


それ以上にー


ただ逢いたい、話したい…。


好きだと告げたい…。



ミネルバに戻り、所在を聞くと、彼はデッキへ行ったと告げられた。
階段を上り、デッキに着くと、1人で海を眺めるアスランの姿を見つけた。

「ザラ隊長!」

「……!……君か……」

「………」

先程の言い合いを思い出し、2人の間に少しの沈黙が続くー。
ルナマリアはアスランの前に立つと深々と頭を下げた。

「…あの…隊長、先程は御無礼を失礼いたしました!」

「ル…ルナマリア?」

「以後本当に気をつけたいと思います」

突然の変貌に唖然とするアスラン。
しかし目の前で頭を下げ続けるルナマリアを見て笑顔を見せる。

「…いや、いいんだ。あんなことは…。俺も色々とすまなかった」

「隊長が謝ったら意味ないじゃないですか!本当にごめんなさい」

「…いや、もう気にするな。
 それよりそれを言いにわざわざ戻ってきたのか?」

「え…いや、その……」

「…君は優しいな。俺みたいな頼りない隊長に…」

「そんなっ…頼りなくなんかー」

「頼りないんだよ。シンにも嫌われ、君にも…」

「そ、そんなことありません!だって私アスランさんがー」


思わず本音が出そうになり、口元に手をやる。


(ダメ。アスランさんにはラクス様がいるんだからー)


でも…


「俺が何だ?」

「…っ私は!私は…アスランさんが」


好きで、好きで、好き過ぎて…自分の気持ちを抑制できない。


「私はアスランさんがすー」


そこまで言った時、ルナマリアの話を止めるかのように
隊員がデッキにやってきた。


「ザラ隊長!シンからエマージェンシーが!」

「何?悪い、ルナマリアちょっと行って来る」


そう言い残しアスランは去って行った。

残されたルナマリアは少し哀しいような
安心したような複雑な表情で、ぼそりと呟く。

誰にも聞こえないような小さな小さな声でー


「あなたが好きです」



ーENDー



≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
旧サイト移行分のSEED-D初小説でした。何話か忘れましたが
溺れたステラをシンが助けたあの回へのリンク話です。
この頃はまだアスメイよりアスルナが気になっていたので、
書いたものなんですが、今はすっかりアスメイ派です(*´ω`*)
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。