4月16日、時刻は23時59分。
4月17日まであと1分ー
時計の秒針が刻々と0時に近づくのを見て、
朋香は心の中でカウントダウンをする。
4月17日は朋香の誕生日。
彼、忍足侑士からのバースデーメール
もしくはバースデーコールを待っているのだ。
その手には携帯電話。いつ連絡が来ても
すぐに見られるように、ぎゅっと握りしめていた。
そして秒針が0時を過ぎるー
(あれ…?)
朋香は携帯を開き、念のため時計と時刻が合っているか確認するが、
ディスプレイには間違いなく4月17日、0時00分の表示が。
少し遅れているだけかも…と今度は携帯を眺めながら待ち続ける。
ーが…
さすがに1時間経っても連絡がないということは
確実に忘れているのだろう。朋香は携帯を閉じた。
(忍足さんのバカ…)
楽しみにしていただけあり、衝撃は大きい。
そもそも、この約束は忍足が言い出したことだった。
誕生日当日は平日のため、部活で遅くなるから会えないということで
代わりに誕生日ピッタリの時間に電話かメールをするなんて
宣言をしたために待っていたのだった。
睡魔と闘いながらも忍足からの連絡を待っていた結果、
完全に忘れられてしまったことに肩を落とした朋香は、
携帯の電源をオフにすると、そのまま眠りについた。
次の日ー
学校へ着くと、朋香はさっそく友人たちに愚痴をこぼす。
「ねっ信じられないでしょー!
おかげでこっちは睡眠不足で授業が全く入ってこないもん」
「朋香が怒るのも無理ないわ。自分から言い出して忘れるってねぇ」
「もう暫くの間、会ってやんないんだから!」
怒りに任せてそう決意をした朋香。
忘れたことに気付き、慌てた忍足が何度もメールや電話を
してきているにも関わらず、無視をし続けているのだった。
そんな矢先、朋香に思わぬ出来事が起こる。
昼休みにロッカーを開けると靴の上に1枚の手紙が乗せてあった。
「何これ…?」
不思議な顔をして、そっと手紙を開けてみると
何やらラブレターらしきもののようで…。
(わ…私にラブレター!?こんなの初めて…)
手紙には送り主の名前はなし。
放課後、屋上に来て欲しいと書かれてある。
ちょうど忍足とのことでイライラしていた朋香は
名も知らぬ人から貰ったラブレターに喜ぶ。
(さすがに忍足さんに、このこと話したら嫉妬するかもね)
そんなことを思いながら授業を受け、
放課後ー相手が指定した屋上へと向かうのだった。
終礼が終わり、すぐに屋上にやってきたものの、
まだ相手は来ていない。
先程は彼氏への苛立ちから喜んでいたものの
待っている時間が経つに連れ、次第に朋香は焦りだす。
ラブレターなんて漫画やドラマの世界だけだと思っていた上に
これまで貰ったことがなく、どんな顔をすればいいか分からない様子だ。
(忍足さんとはケンカ中だけど、私が好きなのは忍足さんだし、
ちゃんと断らないといけないよね…)
ソワソワしながら待っていると、反対側から人影が見えた。
西日が反射してよく顔が見えず、目を細める。
「来てくれてありがとう」
「…あ、あの…えーと…」
眩しさと恥ずかしさで、きちんと顔が見られないが、
彼氏がいる以上、きちんと断らないと!と決意し、頭を下げる。
「ごめんなさい!私…付き合ってる人がいるんです!!」
朋香は謝罪の言葉と同時に深々と頭を下げる。
しかし、顔を上げた瞬間、目の前に経っている人を見て言葉を失う。
「あぁぁぁあああ!!!!」
「そら付き合ってる人おってもらわな困るわな。俺の妄想ちゃうし」
「お、お、お…忍足さん!!」
「誕生日おめでとうさん!約束忘れた件はホンマにごめんな」
そう言って、驚く朋香の隙を見て軽くキスをする。
「あの手紙…忍足さんが書いたの?」
「まぁそういうことやな。
普通に呼び出しても来てくれへんと思ったから」
「…連絡、無視していてごめんなさい」
先ほどまでは怒っていた朋香だったが
目の前に現れた忍足を見て、怒りも吹き飛んだようだ。
「いや、怒んの当然やから仕方ないって。
謝らなアカンのは俺やし…ホンマ悪かったと思ってる」
「もう怒ってないから大丈夫!だって、こんなサプライズ…
それにこうしてウチの学校の制服まで来て忍び込んでくれたんだし」
そう言って、普段の制服とは違い青春学園の学ランを着ている
新鮮な忍足の容姿を嬉しそうにマジマジと見つめる朋香。
…だが
上から下まで見た時、1つの異変に気が付く。
「…っアハハハっ…ちょっとそれ何!?制服の裾短い!ダサっ」
忍足は一見、青学の制服を着こなしているかと思いきや、
長さが合っておらず、靴下が思いっきり見えていたのだった。
「そない笑わんでも…これは不二のん借りたからや。
アイツ絶対わざと自分の貸したな」
「まぁいいじゃないですか。
たまにはいいですよ、カッコ悪い忍足さんも…ね」
「ほな、今から埋め合わせにどっか行こか!
今日は練習休みにしたし、時間はいくらでもあるからな」
そう言って朋香の手を取り、屋上から出て行く。
朋香もすっかり怒っていたことを忘れるくらい笑顔になった。
「嬉しいサプライズをありがとうございます!」
「大好きな人を喜ばせることが俺の幸せやからな」
「嬉しい//…あ…でも…その格好で行きます?」
「っアカン!これはよ脱いでくるわ」
「アハハ!じゃあいつもの制服で校門前で待ち合わせましょ!」
こうしてバースデーガール朋香は怒りを封印し、
楽しい誕生日を味わったのでしたー。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
いつしかの朋ちゃん誕生日記念小説でした♪
不二は意地悪をしたのではなく、忍足がきっと青学に来て
「なぁ制服ちょっと貸してくれへん!」なんて言ったに違いない(笑)
丈の短い学ランを着たダサい忍足を想像すると面白いです( *´艸`)
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