「朋ちゃん元気ないよ?どうしたの?」
ここ最近ずっとテンションが低く、
溜息ばかりついている朋香を見て桜乃は心配そうに声をかける。
「ハァ…やっぱり天才って言われていてモテモテだし、
彼女くらいいるよね、きっと…」
「天才って…不二先輩のこと?」
「そう。…ん~なんかもうイヤ!
こんなことでグチグチ言ってる自分にウンザリする!」
「と、朋ちゃん!?」
「決めた!今日の昼休み思い切って聞きに行こっ」
「な、何も今日じゃなくても…」
「だって気になるんだもん!
いつまで考えてたって何も変わらないしね」
そう決心をして、昼休みまでの時間を過ごす朋香だったが、
昼休みが近づくに連れて、次第に心配になってくる。
(さっきはあんなこと言ったけど…正直不安だな…)
私が不二先輩を好きだと意識し始めたのは
ちょうど都大会が終わった頃から。
試合を見に行くと、いつも優しく声をかけてくれて、
テニスのこととか勉強とか色々教えてくれて…
同級生とはまた違って、先輩の落ち着いた雰囲気が
すごく心地よくて、気づけば先輩のことばかり考えていた。
しかし、そう感じるのは自分だけじゃないことがわかる。
試合を見ていても“不二くんかっこいい”や“好き”という言葉、
時には告白をしている様子まで見てしまったからだ。
(彼女がいないなら、いっそのこと私も告白したいな…)
そんなことを考えていると、あっという間に昼休みになってしまった。
考えごとをしていると、いつもは長く感じる授業も早く思える。
朋香は意を決して、昼休みはいつも屋上にいるという
乾からの情報を頼りに屋上へと向かった。
屋上へ着くと、屋上の端に置いてあるベンチに腰を掛けて
本を読んでいる不二を見つけた。
(うぅ~本人を目の前にしたら緊張してきた~)
普段サバサバしている朋香も好きな人の目の前では別人だった。
緊張を悟られないように普段通りに接してみる。
「不二先輩っ」
「…やぁ朋ちゃん、珍しいね!ここに来るなんて」
そういって不二は笑顔を見せる。
朋香は緊張しながらも思い切って質問を投げかけた。
「あ、あの…前から気になってたことなんですけど…
不二先輩は好きな人とかいるんですか?」
「え…?」
「…っほら先輩モテるし、付き合ってる人とかいそうだなぁって」
(お願い!付き合ってる人いませんように!)
言葉では興味本位のように聞いてはいるが、本音はこうだった。
本音を悟られないように恐る恐る不二の目を見てみる。
目が合うと不二はいつものように笑みを浮かべて一言…
“付き合っている人はいないよ”とー
その言葉を聞き、ホッと肩の力を和らげる。
しかし、次の瞬間、再び朋香に緊張が走ることになる。
「…好きな人はいるけどね」
(…!!!)
不覚だった。確かに考えてみれば分かることだった。
彼女がいなくても好きな人は別にいるかもしれない。
「……あ、そうなんですね…」
朋香はかなりショックだったが、
変に思われないように、無理な笑顔を作って話を続ける。
「どんな人なんですか?」
「うーん…年下の子なんだけどね、すっごくかわいいんだ。
いつも元気で明るくて、勝ち気で負けず嫌い、だけど優しくて、
試合の時には元気をくれて、いつも真剣に応援してくれてね」
「へぇー…そうなんですね」
不二のあまりに溺愛している様子を目の当たりにして
朋香はショックで、空返事のような相槌を打って会話を続けるが、
不二の口から思いもしなかった言葉が発せられる。
「普段もよく部活を見に来てくれるんだ。髪はツインテールで…
今、僕の隣にいて、小坂田朋香って名前の子だよ」
「え……!?…えっ…い、今…っ…!!」
ショックを受けていたところに更に強い衝撃が加わる。
目を泳がせながら必死に状況を把握しようとする朋香だが
あまりの衝撃により、立ち尽くして言葉に詰まってしまっていた。
「つまり…僕が好きなのは朋ちゃんだよ」
「え…///な、何を…そんなっ…えっ…!?」
「驚かせたみたいだね。でもそろそろ戻らなくっちゃ」
昼休みを終えるチャイムの音を聞いて、
不二はそう言うと、屋上から去ろうと扉へ向かう。
その時、朋香の中で何かが吹っ切れた。
(今言わないと一生後悔しちゃう!)
「先輩待って!…私も好きな人がいるんです!
年上なんですけど、テニスがすっごく上手くて、カッコ良くて…
いつも笑顔で優しくて、相談にも乗ってくれて、頭が良くて、
今、私と話している不二周助って名前の人なんです!」
「…朋ちゃん…」
「…言っちゃった」
「嬉しい。でも無理してない?僕が言ったから…」
「無理なんかじゃないんです!
さっきは突然のことでビックリして…夢みたい…」
「夢じゃないよ。それを言うなら僕の方こそ。
朋ちゃんは越前が好きなんだと思ってたんだ…言ってよかったよ」
「…私も、ずっとそうだと思ってた…
けど先輩はそれを気付かせてくれたんです。私は…先輩が好きです」
やっと気持ちを伝えられてスッキリする朋香。
その言葉を聞いて、嬉しそうな笑顔見せる不二。
そして2人の距離が近づいた時、
朋香は思い出したように時計を指差す。
「あっ授業!さっきチャイム鳴りましたよね…?」
必死で告白をしたので、すっかり時間を忘れていた朋香。
校舎の時計を見て、慌てて屋上から出ようとするが
不二がその腕を掴んで止める。
「っ不二先輩!?」
「朋ちゃん次の時間は何?」
「古典なんです」
その返答を聞いて、不二が別の笑顔を見せる。
「じゃあ…サボっちゃおうか」
「え!?」
「古典は得意だからね。僕が後で教えてあげるよ」
そう言うと、朋香を引き寄せて抱き締める。
不二に身を委ねると、朋香も不二に手を回してギュッと抱きつく。
「…天才と呼ばれる先輩も、悪いことしちゃうんですね」
「好きな人と一緒にいるだけだから悪いことじゃないよ。
それに、とあるフランスの小説家はこう言ったんだ。
“天才とは、やろうと思ったことは断じて実行に移す人のこと”
ってね。まさにこれがそう」
そう言って、朋香を見つめると、そっと口づけをした。
ーENDー
≪あとがき≫
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
旧サイトのさらに前の前の携帯サイトから運んできた不二朋でした♪
テニプリ歴が後半に差し掛かるにつれ、他校×朋ちゃん推しで
書いていたので、青学×朋ちゃんはかなり貴重です(*´ω`*)
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